判旨
賃料不払に基づく解除において、3日間という催告期間であっても、諸般の事情や取引通念に照らして相当と認められれば、民法541条の催告として有効である。また、延滞賃料が少額であっても、原則として同条の適用が排除されることはない。
問題の所在(論点)
1. 賃料支払の催告において、3日間という猶予期間が民法541条にいう「相当の期間」にあたるか。 2. 比較的軽微な賃料の延滞を理由とする解除権の行使が認められるか。
規範
民法541条に基づく契約解除における「相当の期間」を定めた催告であるか否かは、債務不履行の具体的状況、諸般の事情、および取引の通念に照らして判断される。また、賃料の不履行が比較的軽微なものであっても、信義則上の特段の事情がない限り、法定解除権の行使は制限されない。
重要事実
上告人(賃借人)は、被上告人(賃借人)に対し、合計16万8600円の賃料を延滞していた。被上告人は上告人に対し、3日間の猶予期間を定めて当該延滞賃料の支払を催告し、期間内に支払がなかったため賃貸借契約の解除を主張した。これに対し上告人側は、3日間という期間は不当に短く催告として無効であること、および延滞が軽微であるため解除権の行使は権利濫用にあたること等を主張して争った。
あてはめ
本件における3日間の猶予期間は、延滞された賃料が16万8600円という金額に達していたことや、本件における諸般の事情および取引通念に照らせば、不当に短いとはいえず相当な期間であると認められる。また、賃料の延滞が軽微であるからといって民法541条や419条(金銭債務の特則)の適用が当然に排除される根拠はなく、本件の解除権行使が信義則違反や権利濫用にあたると評価すべき特段の事実も認められない。
結論
本件催告は有効であり、3日間の経過により解除権が発生する。また、延滞賃料の多寡にかかわらず、相当な期間を定めた催告を経ている以上、契約解除は有効である。
実務上の射程
催告期間の「相当性」の判断において、数日程度の短期間であっても事案により有効となり得ることを示した。また、信頼関係破壊の法理が確立する前の判例ではあるが、軽微な不履行であっても原則として解除を認める厳格な姿勢を示しており、現代の実務では「信頼関係が破壊されたか」という規範とあわせて、催告期間の妥当性を検討する際の基礎となる。
事件番号: 昭和36(オ)438 / 裁判年月日: 昭和37年8月21日 / 結論: 棄却
家屋の賃貸人が契約解除の前提として同一市町村に住む賃借人に対し過去約一年間の延滞賃料約三万円の催告をなすにつき定めた期間が一日であつても、賃貸人賃借人間に約三年前より家屋明渡請求訴訟が継続し、右訴訟において賃借人が家屋所有権の帰属を争い、あるいは賃料の増額を争つて賃料の支払を拒否したまま経過したなど判示事情があるときは…