判旨
行政処分が違法であっても、諸般の事情を考慮して、その取消しが公共の福祉に適合しないと認められる場合には、事情判決の法理(行政事件訴訟法31条1項)により、取消請求を棄却することができる。
問題の所在(論点)
懲戒免職処分が違法である場合に、行政事件訴訟法31条1項の「事情判決」の法理を適用して取消請求を棄却することが許されるか。具体的には、処分の違法性を認めつつ、公共の福祉への適合性を理由に請求を棄却する判断の妥当性が問われた。
規範
行政処分が違法である場合であっても、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずるおそれがあるときは、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮した上で、処分を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる(行政事件訴訟法31条1項参照)。
重要事実
上告人(原告)に対する免職の懲戒処分が行われたが、当該処分には違法な点が存在した。しかし、原審(福岡高裁)は、当該処分を取り消すことによって生じる影響やその他の諸事情を考慮した結果、処分の取消しが公共の福祉に適合しないと判断し、事情判決により上告人の請求を棄却した。上告人はこれを不服として上告した。
あてはめ
本件において、免職処分自体は違法であった。しかし、原審が確定した事実関係に基づけば、当該処分を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認められる特段の事情が存在する。裁判所は「一切の事情を考慮」した上で、取消しによる法秩序の混乱や公益への影響を重視し、個別的な権利救済よりも公共の福祉の維持を優先すべき状況にあると判断した。この判断は、事実認定および証拠の取捨選択の範囲内であり、正当である。
結論
本件免職処分が違法であっても、一切の事情を考慮して取消しが公共の福祉に適合しないと認められるため、上告を棄却し、事情判決による請求棄却を維持する。
事件番号: 昭和29(オ)973 / 裁判年月日: 昭和32年5月10日 / 結論: その他
公務員の懲戒権者が懲戒処分を発動するかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきかを決定することは、その処分が全く事実上の根拠に基かないと認められる場合であるか、もしくは社会観念上著しく妥当を欠き懲戒権者に任された裁量権の範囲を超えるものと認められる場合を除き、懲戒権者の裁量に任されているものと解するのが相当である。
実務上の射程
行政事件訴訟法31条1項の事情判決に関するリーディングケースの一つ。答案上は、処分の違法性を認めつつも、取消しによる公益侵害が著しい場合の例外的な処理として、条文の要件(「公の利益に著しい障害」および「一切の事情を考慮」)に当てはめる際の根拠として活用する。本判決は、この法理が懲戒処分等の対人処分にも適用され得ることを示唆している。
事件番号: 昭和61(行ツ)33 / 裁判年月日: 平成4年9月24日 / 結論: 棄却
地方公務員法三七条一項は、憲法二八条に違反しない。 (補足意見がある。)
事件番号: 昭和33(オ)831 / 裁判年月日: 昭和34年12月4日 / 結論: 棄却
弁護士会または日本弁護士連合会が弁護士を懲戒した後に、懲戒請求者と被請求弁護士との間に示談が成立したとしても、かかる事実は、懲戒処分の当否とは関係がなく、懲戒処分の当否を争う訴訟の裁判に際し斟酌すべき事実ではない。
事件番号: 昭和59(行ツ)36 / 裁判年月日: 平成元年4月25日 / 結論: 棄却
一 地方公営企業労働関係法一一条一項は、同法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される場合を含めて、憲法二八条に違反しない。 二 市の市長部局各部門、教育委員会で多数の職員が参加して約一時間の職場放棄を行い、市立の二病院で多数の職員が参加して二四時間の同盟罷業を行つたなどの…