判旨
不法占拠に基づく損害賠償において、特別の事情による損害の予見可能性の有無は、本訴状の送達時を基準として判断することができる。
問題の所在(論点)
不法行為による損害賠償請求において、特別の事情によって生じた損害の予見可能性を判断すべき基準時はいつか。
規範
不法行為に基づく特別事情による損害(民法416条2項準用)について、加害者がその事情を予見し、又は予見し得たか否かの判断時期は、特段の事情がない限り、損害賠償を請求する旨の「本訴状の送達時」を基準とすることができる。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人ら(被告)に対し、本件土地の不法占拠に基づき、得べかりし事業上の純益金相当の損害賠償を請求した。原審は、被上告人の得べかりし純益金が昭和22年2月当時、少なくとも148,500円であり請求額を上回ることを認定した上で、本訴状の送達時を特別事情の予見可能性を判断すべき時期とした。上告人らはこれを不服として上告した。
あてはめ
本件では、被上告人が事業により得られたはずの純益金という特別事情による損害が発生している。原審が、この特別事情を予見し得べき時期を「本訴状の送達時」と認定したことは、訴訟の提起によって加害者が損害の内容や背景事情を認識し得る状態に置かれることから、正当として是認される。したがって、当該時点を基準として予見可能性を肯定し、損害賠償額を算定した判断に違法はない。
結論
本訴状の送達時を特別事情の予見可能性の基準時とした原審の判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
不法行為における特別損害の予見可能性の基準時について、訴状送達時を一つの目安として示した点に実務上の意義がある。答案上は、加害者が被害者の特殊な事情を知り得た客観的事実(交渉の開始や通知、提訴等)を摘示し、416条2項の予見可能性を論じる際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)1068 / 裁判年月日: 昭和38年12月19日 / 結論: 棄却
特別事情による損害か否かは法律問題である。
事件番号: 昭和29(オ)920 / 裁判年月日: 昭和32年2月15日 / 結論: 破棄差戻
株式会社の代表取締役が会社の代表者として土地を所持する場合には、右土地の直接占有者は会社自身であつて、代表者は、個人のためにもこれを所持するものと認めるべき特段の事情がないかぎり、個人として占有者たる地位にあるものとはいえない。
事件番号: 昭和29(オ)930 / 裁判年月日: 昭和30年12月1日 / 結論: 棄却
民法第四一六条第二項に基く損害賠償の請求がなされた場合に、債務者において、債務者が第三者から手附を受取つたことを知つていたときは、手附倍戻の特約がなされていたことを知らなかつたとしても、債権者と第三者間の契約は手附の倍額を償還して解除せられるかも知れぬことを予見していたものというべきである。
事件番号: 昭和33(オ)685 / 裁判年月日: 昭和34年5月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法の適用を排除する「一時使用のための借地権」に該当するか否かは、賃貸借の目的、期間、建物設備の種類、賃貸借成立の経緯等を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)と被上告人(賃主)との間で本件土地の賃貸借契約が締結された。原審(東京高判昭33・3・25)によれば、契約…