判旨
遺言者が遺言後に協議離縁の届出をしたとしても、直ちに遺言を全面的に撤回したものとは認められず、遺言者の当時の意思に基づき遺言の効力は維持される。
問題の所在(論点)
遺言後になされた協議離縁の届出行為が、民法上の遺言の撤回(前遺言と抵触する後の生前処分等)に該当し、遺言が失効するか。
規範
遺言の撤回(民法1022条、1023条)の成否は、遺言後の行為が遺言と抵触するか否か、および当該行為が遺言を全面的に取消す意思をもってなされたかという観点から判断される。遺言者が遺言時に期待していた状況の変化が生じ、その後に特定の届出手続(協議離縁等)がなされたとしても、遺言時の意思がその後の届出と無関係に独立して存在すると認められる場合には、遺言の効力は失われない。
重要事実
遺言者Dは、昭和27年7月26日に本件第二遺言を作成した。Dは当時、上告人らとの間で協議離縁届書への捺印・提出を求めていたが、上告人らがこれを遅延させていた。Dは上告人らの対応に拘わらず、本件遺言を作成するに至った。その後、同月28日にD自ら協議離縁の届出を行ったため、上告人らは「離縁届出行為は遺言を全面的に取消す意思でなされたものであり、遺言と抵触する」として遺言の失効を主張した。
あてはめ
Dが本件遺言をなした当時、上告人らによる離縁手続の遅延という状況があったものの、Dはそれとは独立して遺言をなす決意を固めていた。その後の協議離縁届出によって上告人らが推定相続人でなくなったとしても、それは遺言における推定相続人廃除手続の必要性をなくす結果をもたらすに過ぎない。原審の認定によれば、Dの遺言当時の意思は届出によって全面的に変更されたものではなく、両者は抵触しない。したがって、撤回の意思があったとは認められない。
結論
本件第二遺言は、その後の協議離縁届出によって撤回されたものとはいえず、依然として有効である。
実務上の射程
遺言後の身分上の行為(離縁等)が遺言内容と関連する場合であっても、当然に撤回(民法1023条2項)とみなされるわけではなく、遺言者の具体的な意思解釈が優先されることを示す。答案上は、撤回擬制の成否を検討する際の事実認定の考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)191 / 裁判年月日: 昭和33年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠の取捨選択および事実認定は事実審裁判所の裁量に属し、特定の鑑定書を採用しない理由を判決書に明示しなかったとしても、直ちに違法とはいえない。 第1 事案の概要:上告人は、亡Dが自筆証書遺言(乙1号証の2)を自筆したと主張し、それを支持する鑑定書を提出した。しかし、原審(二審)は当該鑑定書を採用せ…
事件番号: 昭和63(オ)955 / 裁判年月日: 平成元年6月20日 / 結論: 破棄自判
自筆遺言証書における押印は、指印をもつて足りる。
事件番号: 昭和30(オ)95 / 裁判年月日: 昭和31年10月4日 / 結論: その他
遺言者の生前の遺言無効確認の訴は不適法である。