一 遺言者が遺言を撤回する遺言を更に別の遺言をもって撤回した場合において、遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が当初の遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、当初の遺言の効力が復活する。 二 遺言者が、甲遺言を乙遺言をもって撤回した後更に乙遺言を無効とし甲遺言を有効とする内容の丙遺言をしたときは、甲遺言の効力が復活する。
一 遺言者が遺言を撤回する遺言を更に別の遺言をもって撤回することにより当初の遺言の効力が復活する場合 二 遺言者が遺言を撤回する遺言を更に別の遺言をもって撤回した場合において当初の遺言の効力の復活が認められた事例
民法1022条,民法1025条
判旨
撤回された遺言(原遺言)が、その後の撤回遺言の更なる撤回によって復活するかにつき、遺言書の記載から遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、民法1025条但書の法意に照らし、原遺言の効力の復活を認めるべきである。
問題の所在(論点)
一度撤回された遺言が、その撤回遺言をさらに撤回する遺言によって復活するか(民法1025条の解釈)。
規範
遺言(原遺言)を撤回した遺言者が、更にその撤回遺言を撤回した場合、原則として原遺言は復活しない(民法1025条本文)。しかし、遺言書の記載に照らし、遺言者の意思が原遺言の復活を希望するものであることが明らかなときは、民法1025条但書の法意に鑑み、遺言者の真意を尊重して原遺言の効力の復活を認めるのが相当である。
重要事実
遺言者Dは、甲遺言(被上告人に有利)をした後、乙遺言により甲遺言を全て取り消すと記載して撤回した。その後、Dは丙遺言により「乙遺言(Gに渡したもの)は全て無効とし、甲遺言(H弁護士のもとで作成したもの)を有効とする」と記載した。Dの死後、被上告人は甲遺言に基づき不動産の移転登記を行ったが、他の相続人が甲遺言の失効を主張して無効確認等を求めた。
あてはめ
Dは丙遺言において、乙遺言を無効とした上で、明示的に「甲遺言を有効とする」旨を記載している。この丙遺言書の記載によれば、亡Dが原遺言である甲遺言を復活させることを希望していたことは明らかといえる。したがって、民法1025条但書の「遺言者がその撤回を取り消した遺言を効力をもたせる意思を表示したとき」に準ずるものとして、甲遺言の復活を認めるのが相当である。
結論
亡Dの真意は明らかであり、甲遺言は有効に復活する。したがって、甲遺言に基づきなされた登記は有効であり、上告人らの請求は棄却される。
実務上の射程
民法1025条但書の解釈(あるいは類推適用)において、「復活の意思」の判断基準を示した重要判例である。答案上では、条文どおり「錯誤・詐欺・強迫」による取消し(1025条但書)が認められない場面であっても、遺言書の文言から復活の意思が明確に読み取れる場合には、同条の趣旨を拡張して復活を認める根拠として使用する。
事件番号: 平成26(受)1458 / 裁判年月日: 平成27年11月20日 / 結論: 破棄自判
遺言者が自筆証書である遺言書に故意に斜線を引く行為は,その斜線を引いた後になお元の文字が判読できる場合であっても,その斜線が赤色ボールペンで上記遺言書の文面全体の左上から右下にかけて引かれているという判示の事実関係の下においては,その行為の一般的な意味に照らして,上記遺言書の全体を不要のものとし,そこに記載された遺言の…
事件番号: 平成9(オ)2060 / 裁判年月日: 平成11年9月14日 / 結論: 棄却
いわゆる危急時遺言に当たり、立ち会った証人の一人があらかじめ作成された草案を一項目ずつ読み上げ、遺言者が、その都度うなずきながら「はい」などと返答し、最後に右証人から念を押され了承する旨を述べたなど判示の事実関係の下においては、民法九七六条一項にいう遺言の趣旨の口授があったものということができる。