判旨
当事者が工事施行に関する協定の成立を主張している場合、裁判所がその代理人を介した代金額の合意を認定することは、弁論主義に反しない。
問題の所在(論点)
当事者が本人間の「協定成立」を主張している場合に、裁判所が「代理人を介した協定成立」を認定することが、弁論主義(主張責任)に反するか。
規範
弁論主義の第1テーゼに基づき、裁判所は当事者の主張しない事実を判決の基礎とすることはできない。もっとも、主要事実の主張があれば、その詳細な態様(代理人による合意か本人による合意か等)については、当事者の主張と合致する範囲内において、証拠に基づき認定することが許される。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人(被告)との間で協議の上、追加工事に関する施行協定が成立したと主張した。原審は、上告人の代理人であるDやEらが、一定の代金額の範囲で協定を締結した事実を認定した。これに対し上告人は、代理人による合意の事実は当事者が主張していないため、判決の基礎にできないと主張して上告した。
あてはめ
本件において被上告人は、上告人との間で協議の上で追加工事の協定ができた旨を主張している。この「協定の成立」という主要事実に対し、それが上告人の代理人であるDやEらを通じてなされたという認定は、当事者が主張する協定成立の具体的事実態様の認定にすぎない。したがって、当事者が主張していない事実を判決の基礎としたものとはいえず、弁論主義違反の違法は認められない。
結論
代理人を介した合意の認定は当事者の主張の範囲内であり、弁論主義に反しないため、上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、代理人による契約締結の事実が、契約成立の主張に含まれるかという文脈で活用できる。実務上、契約の成立という主要事実の主張があれば、その履行態様としての代理権行使の有無を裁判所が認定することは、特段の事情がない限り弁論主義に反しないとする準則を示している。
事件番号: 昭和31(オ)764 / 裁判年月日: 昭和33年7月8日 / 結論: 棄却
ある契約が甲乙間に成立したものと主張して、右契約の履行を求める訴が提起される場合に、裁判所が右契約は甲の代理人と乙との間になされたものと認定したとしても、弁論主義に反するとはいえない。