判旨
法人の手形振出行為が目的の範囲内か否かを判断するに際し、直接の相手方との関係では、その原因関係(保証行為等)が目的の範囲外であれば、手形行為は原因を欠くものとして無効となる。したがって、裁判所は手形行為自体の客観的性質のみならず、その原因行為が目的の範囲内か否かを判断しなければならない。
問題の所在(論点)
法人の手形振出の直接の相手方から手形金の請求がなされた場合において、法人の目的の範囲内か否かを判断するにあたり、その原因行為(原因関係)が目的の範囲外であることを考慮すべきか。すなわち、原因行為が無効であれば手形行為も無効(原因を欠く)となるか。
規範
法人の行為が目的の範囲内か否かは、定款に定められた目的遂行のために直接・間接に必要な範囲か否かによって、客観的・抽象的に判断される。また、手形振出の直接の相手方との関係においては、その原因行為(本件では保証行為)が法人の目的の範囲外であるならば、当該手形振出は原因を欠くことになり、振出人は手形支払義務を負わない。
重要事実
上告組合(振出人)が、被上告会社(受取人)に対し、ある保証行為を原因として本件手形を振り出した。上告組合は、原因関係である保証行為が組合の事業目的の範囲外であり無効であるから、直接の相手方である被上告会社に対し手形支払義務を負わないと主張した。これに対し、原審は、手形行為の有効性を判断するにあたっては手形行為自体のみを対象とすべきであり、原因行為は考慮すべきでないとして、上告組合の主張を退けた。
あてはめ
手形振出の直接の相手方との関係において、手形支払義務の有無を判断するには、その振出が原因を欠くか否かを検討する必要がある。本件では、手形振出の直接の原因は保証行為であるところ、もしこの保証行為が上告組合の目的の範囲外であれば、直接の当事者間において手形はその原因関係を欠くことになる。したがって、原審が「手形行為のみを対象とすべきであり原因行為は除外すべき」とした判断は、目的の範囲外による無効の主張を封じるものであり、法的に誤りである。
結論
手形振出の直接の相手方との関係では、原因行為が法人の目的の範囲外であれば、手形振出も原因を欠くものとして無効となる。原審は原因行為が目的の範囲内か否かを判断すべきであったとして、原判決を破棄し、差し戻した。
実務上の射程
法人の権利能力(民法34条、現行法人法等)に関する論点。手形行為においては行為の定型性から原因関係と切り離して判断される傾向があるが、直接の当事者間(受取人・振出人間)では、原因関係の瑕疵(目的外による無効)が手形行為の効力に直結することを示した。答案上は、第3者が介在しない当事者間の抗弁として、原因関係の無効を構成する際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和32(オ)180 / 裁判年月日: 昭和33年7月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告の理由が原審の事実認定や証拠の取捨選択を非難するものにすぎない場合、原判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背を主張するものとは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原審が行った証拠の取捨および事実の認定に不服があるとして上告を申し立てた。 第2 問題の所在(論点):事実認定の不当を理…