判旨
行政庁の確認行為があったとしても、裁判所はそれに拘束されず、証拠に基づいて独立して事実認定を行うことができる。
問題の所在(論点)
農業委員会による世帯分離の確認等の行政上の判断が、民事訴訟(または行政訴訟の事実認定)において裁判所を拘束し、証拠の取捨選択を制限するか。
規範
行政処分や行政上の認定・確認は、裁判所による事実認定を拘束するものではない。裁判所は、当事者が提出した証拠の取捨選択および証拠調べの結果に基づき、自由な心証によって事実を確定する権限を有する。
重要事実
農地買収計画において、上告人とその父Dが「同一世帯」に属するか否かが争点となった。上告人は、農業委員会が両名を別世帯であると確認した書面(甲30号証)を提出し、別世帯であると主張した。しかし、原審は当該証拠を採用せず、両名が同一世帯に属していたとの事実を認定した。
あてはめ
上告人は、農業委員会の確認がある以上、別世帯であると認定すべきだと主張する。しかし、裁判所がどの証拠を採用し、どの事実を真実と認めるかは専ら裁判所の専権に属する。本件において原審が農業委員会の確認書面を採用せず、独自の事実認定を行ったことは適法な証拠選択の範囲内であり、不当とはいえない。したがって、原審の認定した「同一世帯」という事実は維持されるべきである。
結論
農業委員会の確認は裁判所の事実認定を拘束せず、原審の証拠選択および事実認定に違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
行政庁による証明や確認(公証行為等)があったとしても、裁判所における事実認定の場面では、それが直ちに事実を確定させるものではないことを示す。証拠能力や証明力の評価の問題として処理すべきであることを示唆する。
事件番号: 昭和29(オ)258 / 裁判年月日: 昭和31年3月2日 / 結論: 棄却
遡及買収指示手続に違法があつても、このため、右指示に基き定められた農地買収計画が違法となることはない。
事件番号: 昭和27(オ)1100 / 裁判年月日: 昭和30年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁の裁量権の有無及び範囲は、根拠規定が客観的な判断基準を示しているか否かにより区別され、基準がない場合は政策的考慮に委ねられた自由裁量となる一方、基準がある場合はその基準への該当性に関し裁判所の審査が及ぶ。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法(以下「法」という)に基づき、本件土地…
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
事件番号: 昭和25(オ)419 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の解約について合意がなされた場合であっても、その解約が適法かつ正当であるか否かは、自作農創設特別措置法の趣旨に照らし、小作人と地主の生活状態等を比較衡量して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人とD等との間で農地の解約について合意がなされた事案において、原審はその解約が合意によるものであ…
事件番号: 昭和31(オ)48 / 裁判年月日: 昭和33年5月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「耕作の業務を営む」とは、営利の目的を必要とせず、自家用農産物を栽培する場合も含まれる。 第1 事案の概要:上告人は本件農地の所有者であったが、訴外Dが上告人から本件農地を借り受けて耕作していた。DおよびEは、販売目的ではなく自家用農産物の栽培を目的として本件農地…