判旨
土地区画整理に伴う換地予定地指定の通知は、賃借人に対してもなされるべきであるが、特段の方式を要する旨の規定がない以上、書留配達証明郵便等の厳格な方式による必要はない。また、換地指定に伴う明渡請求は、施行者の措置に不備があったとしても、自らの意思に基づかず指定を受けた者が行う限り、信義則違反や権利濫用には当たらない。
問題の所在(論点)
換地予定地指定の通知が賃借人に対して有効になされたといえるか。また、換地指定の過程における施行者の不備を理由に、換地を受けた者による明渡請求を信義則違反や権利濫用として拒絶できるか。
規範
土地区画整理法(当時の特別都市計画法)に基づく換地予定地指定の通知を賃借人に行う際、法に特段の方式を要する旨の規定がない場合には、書留配達証明郵便等の特定の方式によることを要さず、口頭やその他の方法による通知も有効である。また、換地指定を受けた者が行う建物収去土地明渡請求について、仮に施行者の措置に不備があり賃貸人に債務不履行が生じたとしても、その指定が当該土地所有者の意思に基づかないものである限り、原則として信義則違反(民法1条2項)や権利濫用(同条3項)とはならない。
重要事実
岐阜市の土地区画整理事業において、上告人(賃借人Dの承継人)が居住する土地が被上告人の換地予定地として指定された。上告人の先代Dは、昭和21年頃に市役所から本件換地予定地指定の事実を告げられていた。被上告人は、指定に基づき上告人に対し建物収去及び土地明渡を求めた。これに対し上告人は、賃借人に対する通知が書留等の厳格な方式でなされておらず無効であること、及び明渡請求は信義則違反・権利濫用であると主張して争った。
あてはめ
通知の方式について、法規上、賃借人に対する通知に特段の方式を要する規定は存在しない。本件では、賃借人Dが市役所から直接指定の事実を告げられた事実が認められるため、通知は有効になされたと評価される。次に信義則違反等について、被上告人が本件土地を換地として指定されたのは自らの意思に基づくものではない。たとえ施行者の措置に不備があり、賃貸人が賃借人に対して債務不履行責任を負う余地があったとしても、その帰責事由を被上告人に負わせることはできない。したがって、被上告人による明渡請求は正当な権利行使であるといえる。
結論
本件通知は有効であり、被上告人による建物収去土地明渡請求は信義則違反や権利濫用には当たらない。したがって、上告人の請求は棄却される。
事件番号: 昭和37(オ)238 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 破棄差戻
従前の土地の一部を賃借する者は、土地区画整理法に定める権利申告の手続をして土地区画整理事業の施行者から仮に使用収益しうべき部分の指定をうけないかぎり、仮換地につき使用収益することができない。
実務上の射程
行政処分としての換地予定地指定が私法上の権利行使(明渡請求)に与える影響を判示した事例である。特に通知の方式については、法律に規定がない限り「到達」という実態を重視する姿勢を示している。答案上、行政手続の不備を理由とした私法上の抗弁を検討する際、処分の公定力や当事者の意思の介在の有無を考慮する指標となる。
事件番号: 昭和30(オ)645 / 裁判年月日: 昭和31年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物明渡請求が権利の濫用に当たるか否かは、請求側の正当な目的の有無に加え、相手方側の事情を総合的に斟酌し、社会通念上是認できない程度のものといえるかによって判断すべきである。 第1 事案の概要:被上告人(権利者)が上告人(占有者)に対し、本件建物の明渡しを求めて提訴した。上告人は、当該明渡請求が権…
事件番号: 昭和30(オ)860 / 裁判年月日: 昭和33年2月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人が継続的に賃料の受領を拒絶している場合、賃借人が弁済の提供を継続しなくても、その後の賃料を供託することは有効であり、賃料不払による解除は認められない。 第1 事案の概要:賃借人(被上告人)は、昭和24年から26年の各年末に賃料を持参したが、賃貸人(上告人)はこれを受理せず返還した。さらに昭和…
事件番号: 昭和31(オ)627 / 裁判年月日: 昭和33年7月3日 / 結論: 棄却
土地改良法第八条第四項による書類の縦覧期間が法定の二〇日間に満たなくても、満一〇日間縦覧期間が存した以上、同法第一〇条第一項によつてした知事の土地改良区設立認可は当然無効ではない。
事件番号: 昭和30(オ)447 / 裁判年月日: 昭和31年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人名義を用いて契約を締結する際、相手方が名義人本人のみに契約を限定する意思がなく、指定された者であれば誰でもよいという意思を持っていた場合には、実際の行為者または指定された者を契約の当事者として確定すべきである。 第1 事案の概要:不動産取引において、Dが被上告人に本件宅地を買い受けさせることと…