一 酒類販売業免許の申請をした会社の免許拒否処分当時までの経営実績が、創業当初の二事業年度にはそれぞれわずかな損失金を出したものの、その後の二事業年度にはそれぞれわずかではあるが利益を計上し、未処理損失金も解消されたというものであったなど判示の事実関係の下においては、右業績の回復が右会社が代表者個人から賃借している店舗の賃借料及び代表者等の役員報酬を減額したことによることなどを考慮しても、右会社の経営の基礎が薄弱であるとして右申請に酒税法一〇条一〇号に該当する事由があると断定することはできない。 二 酒類販売業免許の申請が、酒類販売業免許等取扱要領(昭和三八年一月一四日付間酒二−二「酒類の販売業免許等の取扱について」国税庁長官通達に別冊)の定める小売基準数量要件を充足しており、同要領の定める基準世帯数要件は満たさないものの、免許後の小売販売場一場当たりの世帯数が基準世帯数を大きく下回るものではなく、既存業者のうち零細とされる者の酒類販売以外の営業内容が明らかにされていないなど判示の事実関係の下においては、免許を与えることにより酒類の需給の均衡が破れるものとして右申請に酒税法一〇条一一号に該当する事由があると断定することはできない。
一 酒類販売業免許の申請に酒税法一〇条一〇号に該当する事由があると断定することはできないとされた事例 二 酒類販売業免許の申請に酒税法一〇条一一号に該当する事由があると断定することはできないとされた事例
酒税法9条1項,酒税法10条10号,酒税法10条11号
判旨
酒税法に基づく酒類販売業免許の拒否事由(10条10号、11号)は、憲法22条1項の職業選択の自由に対する規制であることに鑑み、酒税の適正な徴収という立法目的に照らして限定的に解釈すべきである。拒否要件への該当性は、単なる形式的な基準の充足・不充足だけでなく、具体的事実に基づき客観的に根拠付けられなければならない。
問題の所在(論点)
酒税法10条10号(経営基礎)および11号(需給調整)の拒否事由の解釈、ならびに審査基準(通達・要領)の適用における裁量の限界が問題となる。
規範
酒税法10条各号は限定列挙であり、各号に該当しない限り免許を与えなければならない。10号の「経営の基礎が薄弱」とは、物的・人的・資金的欠陥により酒類製造者からの代金回収に困難を来すおそれがある場合を指す。11号の「需給の均衡」は、新規参入により既存業者の経営を危うくし代金回収を困難にする場合を指す。これらの要件は、既存業者の権益保護のために拡大解釈してはならず、具体的事実により客観的に根拠付けられる必要がある。
事件番号: 平成6(行ツ)76 / 裁判年月日: 平成10年3月26日 / 結論: 棄却
酒税法九条一項、一〇条一〇号と憲法二二条一項に違反しない。
重要事実
上告人はコンビニ経営の同族会社であり、創業期に損失を計上したが、役員報酬の減額等により黒字化し未処理損失を解消した。しかし、税務署は(1)役員報酬等の減額は免許取得のための作為的な体裁にすぎず「経営の基礎が薄弱」(10号)であること、(2)名目的取締役に税金滞納があること、(3)周辺の酒類消費が頭打ちで既存業者が零細であるため「需給の均衡を破る」(11号)ことを理由に、免許を拒否した。
あてはめ
10号について、小規模同族会社が経営安定のために役員報酬等を減額することは何ら異常ではなく、現実に黒字化している以上、経営の基礎が薄弱とは断定できない。また名目的取締役の不適格性は、実際の経営に影響しない限り根拠とならない。11号について、申請が要領上の「小売基準数量要件」を充足している以上、単に周辺業者が零細である等の抽象的事由のみでは、需給均衡を破るおそれがあるという客観的根拠として不十分である。
結論
本件拒否処分は、法10条10号および11号の解釈適用を誤った違法なものであり、これらを適法とした原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
許可制・免許制における拒否事由の解釈において、憲法22条1項の趣旨を引いて「立法目的に照らした限定的な運用」を求める際の有力な規範となる。特に、行政庁が策定した審査基準(通達等)を形式的に適用するのではなく、個別具体的な事実による客観的立証を要求する場面で活用できる。
事件番号: 昭和63(行ツ)56 / 裁判年月日: 平成4年12月15日 / 結論: 棄却
酒税法九条、一〇条一〇号は、憲法二二条一項に違反しない。 (補足意見及び反対意見がある。)