酒税法九条一項、五六条一項一号は、憲法二二条一項に違反しない。
酒税法九条一項、五六条一項一号と憲法二二条一項
憲法22条1項,酒税法9条1項,酒税法56条1項1号
判旨
酒類販売業の免許制は、酒税の適正かつ確実な徴収という重要な公共の利益を目的とするものであり、立法府の裁量権の範囲を逸脱し著しく不合理であるとはいえないため、憲法22条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
酒類販売業について免許制を定めた酒税法9条1項および罰則を規定する同法56条1項1号が、職業選択の自由を保障する憲法22条1項に違反するか。
規範
職業選択の自由(憲法22条1項)に対する許可制による制限は、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要する。もっとも、租税法の定立については、立法の政策的・技術的な判断にゆだねられるべきであり、裁判所は基本的にはその裁量的判断を尊重すべきである。したがって、酒類販売業の免許制については、その必要性と合理性に関する立法府の判断が、政策的・技術的な裁量の範囲を逸脱し、著しく不合理なものでない限り、合憲と解される。
重要事実
被告人は、清酒等の酒類の販売拡大を図るため、所轄税務署長の免許を受けないまま、無免許で販売場を設置して酒類を販売した。これが酒税法9条1項(免許制)および同法56条1項1号(罰則)に該当するとして起訴されたため、被告人は同規定が職業選択の自由を侵害し違憲であると主張して争った。
あてはめ
酒類販売業免許制は、酒税が国税収入に占める割合や販売代金に占める税負担率が高かった時期に、酒税の適正かつ確実な徴収(財政目的)という重要な公共の利益のために導入された。本件当時において、酒税の重要性は相対的に低下していたものの、依然として国税収入における地位や販売代金中の税比率は無視できない。規制緩和の議論はあるが、酒税の重要性が免許制自体の合理性を失わせるほど低下したとはいえず、立法府が免許制を存続させていることが、政策的・技術的な裁量の範囲を逸脱して著しく不合理であるとは断定できない。
結論
酒類販売業免許制を定めた酒税法の各規定は、憲法22条1項に違反しない。
実務上の射程
財政目的による職業制限に関するリーディングケース。薬局距離制限事件等で示された厳格な合理性の基準と比較しつつ、租税徴収の特殊性に基づき「明白性の基準(著しく不合理か否か)」に近い緩やかな審査基準を適用する際の論拠として用いる。ただし、本件は免許制自体の合憲性が争点であり、免許拒否等の「運用」の妥当性については別問題であることに留意が必要である。
事件番号: 平成6(行ツ)76 / 裁判年月日: 平成10年3月26日 / 結論: 棄却
酒税法九条一項、一〇条一〇号と憲法二二条一項に違反しない。
事件番号: 昭和63(行ツ)56 / 裁判年月日: 平成4年12月15日 / 結論: 棄却
酒税法九条、一〇条一〇号は、憲法二二条一項に違反しない。 (補足意見及び反対意見がある。)