酒税法七条一項、五四条一項の規定は、自己消費目的の酒類製造を処罰する場合においても、憲法三一条、一三条に違反しない。
酒税法七条一項、五四条一項の規定と憲法三一条、一三条
憲法13条,憲法31条,酒税法7条1項,酒税法54条1項
判旨
自己消費を目的とする酒造であっても、これを放任すれば酒税の徴収確保に支障を生じるおそれがあるため、酒税法が製造目的を問わず一律に免許制を敷き、無免許製造を処罰することは、立法府の裁量権を逸脱した著しく不合理な規制とはいえず、憲法13条、31条に違反しない。
問題の所在(論点)
自己消費目的の酒類製造を禁止・処罰する酒税法の規定が、憲法13条(個人の尊重・幸福追求権)および31条(適正手続きの保障・罪刑法定主義)に照らして合憲か。特に、財政目的による自由の制限が立法裁量の範囲内といえるかが問題となる。
規範
租税立法の分野における立法府の裁量権は広く、当該規制がその裁量権を逸脱し、著しく不合理であることが明白であるといえない限り、憲法13条、31条等の規定に違反しない。
重要事実
被告人は、自己消費を目的として、酒税法上の免許を受けることなく酒類を製造した。酒税法7条1項および54条1項は、製造目的を問わず酒類製造を免許の対象とし、無免許製造を処罰の対象としている。被告人は、自己消費目的の酒造は酒税収入を減少させる恐れがなく、これを処罰することは酒造りの自由を不合理に制限するものであるとして、同法の合憲性を争った。
あてはめ
酒税は国の重要な財政収入であり、その徴収確保は正当な立法目的である。自己消費目的の酒造であっても、これを放任すれば酒税収入の減少を招き、酒税の徴収確保に支障を生じる事態が予想される。したがって、製造目的のいかんを問わず一律に免許制の対象とし、無免許者を処罰することは、適正な徴収を確保するための合理的手段としての性質を有する。このような規制は、立法府に与えられた裁量権を逸脱した著しく不合理なものとは認められない。
結論
酒税法7条1項、54条1項の規定は憲法13条、31条に違反しない。
実務上の射程
どぶろく裁判として知られる本判決は、財政目的による経済的自由(または生活上の自由)の制限について、大石寺事案(昭和60年判決)の流れを汲み、立法府の広範な裁量を認める立場を堅持したものである。答案上は、租税立法に関する違憲審査基準として「著しく不合理であることが明白」という緩やかな基準を提示する際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和36(あ)2391 / 裁判年月日: 昭和37年4月13日 / 結論: 棄却
旧酒税法(昭和一五年法律第三五号)六六条本文が罰金刑ついて刑法六六条の規定を排除したからといつて、憲法一三条、七六条三項に違反するということはできない。