旧酒税法(昭和一五年法律第三五号)六六条本文が罰金刑ついて刑法六六条の規定を排除したからといつて、憲法一三条、七六条三項に違反するということはできない。
旧酒税法(昭和一五年法律第三五号)第六六条本文の合憲性
旧酒税法(昭和15年法律35号)66条,憲法13条,憲法76条3項,刑法66条
判旨
旧酒税法が罰金刑について刑法66条の酌量減軽の適用を排除していることは、法定刑の幅の中で情状を酌量する余地がある以上、立法府の裁量に属し、憲法13条や76条3項に違反しない。
問題の所在(論点)
旧酒税法66条本文が、罰金刑について刑法66条の酌量減軽を排除していることは、憲法13条(個人の尊重・適正手続)および憲法76条3項(裁判官の良心と憲法・法律による拘束)に違反するか。
規範
特定の罪について刑法66条(酌量減軽)の適用を排除する立法を行うことの当否は、原則として立法政策ないし立法技術の問題として立法機関の裁量に属する。もっとも、当該罰金刑の範囲内(最高額から最低額の間)において情状を酌量する余地が十分に残されており、実質的な適正手続や裁判官の良心による裁判が担保されている限り、憲法13条や76条3項に違反するものではない。
重要事実
上告人は旧酒税法違反の罪に問われ、同法61条1項所定の罰金刑を科された。同法66条本文は、同法違反の罰金刑について刑法66条による酌量減軽の規定を適用しない旨を定めていた。これに対し、弁護人は、酌量減軽の余地を完全に封じることは個人の尊重(憲法13条)や裁判官の良心による拘束(憲法76条3項)に反し、違憲であると主張して上告した。
あてはめ
旧酒税法61条1項が定める罰金刑は「50万円以下」であり、当時の罰金等臨時措置法に基づき最低額(1000円)までの広範な幅がある。この範囲内で裁判所は情状を十分に酌量でき、また5万円以下の場合は執行猶予も可能である。したがって、刑法66条を適用しないとしても、それは「法定刑の範囲内での情状酌量で十分である」という法意に帰する。このような刑罰の枠組みの設計は立法府の裁量の範囲内であり、裁判官の判断権を不当に奪うものとはいえない。
結論
旧酒税法66条本文は憲法13条、76条3項に違反しない。したがって、酌量減軽を認めなかった原判決に憲法違反の違法はなく、上告を棄却すべきである。
実務上の射程
本判決は、刑罰の種類や減免規定の排除に関する「立法裁量」の広さを認めたものである。憲法13条や適正手続、司法権の独立(76条3項)を根拠とした法定刑の違憲主張に対し、法定刑に十分な幅があることをもって合憲性を肯定する論法として活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)398 / 裁判年月日: 昭和25年7月13日 / 結論: 棄却
原審の裁量權の範圍内の量刑を過重なりとする理由だけでは原判決を憲法第一三條に違反するものとはいえない。