受訴裁判所の裁判所書記官が、原告からの誤った回答に基づき被告の就業場所が不明であるとして訴状等の付郵便送達を実施した場合であっても、右裁判所書記官が原告に対し被告の就業場所等につき照会をし、これに対して原告から被告の就業場所が不明である旨の回答がされ、右回答内容等に格別疑念を抱かせるものは認められないなど判示の事実関係の下においては、右裁判所書記官による被告の就業場所の存否に関する認定資料の収集につき裁量権の範囲を逸脱し、あるいはこれに基づく判断が合理性を欠くなどの事情があるとはいえず、右付郵便送達は適法である。
受訴裁判所の裁判所書記官が原告からの誤った回答に基づき被告の就業場所が不明であるとして実施した訴状等の付郵便送達が適法とされた事例
民訴法103条2項,民訴法107条1項1号,旧民訴法172条
判旨
裁判所書記官による付郵便送達の実施に際し、就業場所が不明であるとの認定が、相当な方法で収集した資料に基づき、裁量権の逸脱や合理性の欠如がない限り、当該送達は適法である。
問題の所在(論点)
裁判所書記官が、原告からの調査回答に基づき就業場所を「不明」と判断して実施した付郵便送達(旧民訴法172条、現行107条1項)が、国家賠償法1条1項の適用において違法となるか。
規範
裁判所書記官は送達事務を独立して行う権限を有し、受送達者の就業場所認定に必要な資料の収集は書記官の裁量に委ねられる。したがって、相当と認められる方法で収集した認定資料に基づき就業場所不明と判断して付郵便送達を実施した場合、事後に就業場所が判明したとしても、資料収集につき裁量権の範囲を逸脱し、または判断が合理性を欠くなどの事情がない限り、当該付郵便送達は適法である。
重要事実
原告Dが被告(上告人)に対し貸金等請求訴訟を提起した際、書記官は被告の住所への送達が不在で不能だったため、Dに被告の居住状況や就業場所を照会した。Dは、被告が長期出張中であり稼働場所(Fセメント)から「本州出張中で4月20日帰宅予定」との回答を得たが、勤務先本社への詳細な調査はせず「就業場所不明」と回答した。書記官はこの回答に基づき、当時の裁判所の一般的取扱いに従い付郵便送達を実施し、被告不在のまま判決が確定した。被告は送達が違法であるとして国家賠償請求を提起した。
あてはめ
書記官は、住所地への送達不能後、原告に対し標準的な手続に則って照会を行い、その回答を得ている。Dの回答書には被告が出張中である旨や就業場所不明である旨が記載されており、その内容に格別疑念を抱かせる事情は認められない。書記官が当時の一般的な事務処理慣行に従い、得られた資料から就業場所不明と判断したことは、資料収集の裁量を逸脱したものではなく、判断の合理性も否定されない。したがって、職務上の注意義務違反(過失)は認められず、送達は適法であると評価される。
結論
本件付郵便送達は適法であり、裁判所書記官および裁判官に国家賠償法上の違法な過失は認められないため、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
付郵便送達の効力が争われる国家賠償請求訴訟において、書記官の裁量を広く認める判断枠組みとして機能する。実務上、原告側の調査報告書に明白な虚偽や矛盾がない限り、書記官がそれ以上の職権調査を行う義務はないことを示唆しており、送達手続の安定性を重視する射程を持つ。
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