福島県南会津郡a町を本店の所在地とする株式会社が、定款に別段の定めがないにもかかわらず、その株主総会を東京都新宿区に招集した手続の違法がある場合には、右株主総会における決議が発行済株式の約六四パーセントの株式を有する出席株主全員の賛成によって成立したものであり、過去一〇年以上にわたって東京都内で株主総会が開催され、そのことについて株主から異議が串たことがなかったとしても、当該決議の取消請求は、商法二五一条の規定によりこれを棄却することはできない。
招集手続に違法がある株主総会の決議の取消請求を商法二五一条の規定により棄却することができないとされた事例
商法233条,商法247条,商法251条
判旨
定款に別段の定めがない限り、株主総会を本店所在地またはこれに隣接する地以外の場所で開催することは招集手続の法令違反となり、株主の分布状況や過去の慣例等の事情を考慮しても、裁量棄却を認めるべき「重大でない違反」や「決議に影響を及ぼさない」場合には当たらない。
問題の所在(論点)
定款の定めに反して遠隔地で株主総会を開催したことが招集手続の法令違反となるか。また、出席株主数や過去の慣例を理由に、当該違反を「軽微」として裁量棄却することができるか。
規範
株主総会の招集地について定款に特別の定めがない場合、総会を本店所在地又はこれに隣接する地以外の場所に招集することは、特段の事情のない限り、招集手続の法令違反(会社法298条2項参照)を構成する。また、このような開催地の違反は、原則として取消事由となる瑕疵であり、裁量棄却(会社法831条2項)の対象となる「手続の違反が重大でない」又は「決議に影響を及ぼさない」ものとは解されない。
重要事実
福島県に本店を置く被上告会社は、定款に招集地の定めがないにもかかわらず、東京都新宿区で臨時株主総会を開催した。当時の株主540名のうち福島県内には数十名が所在し、東京都内での開催を希望する株主がいたことから、過去10年以上にわたり東京都内で総会を開催する慣例があった。本件総会には議決権の過半数にあたる株主が出席し、全員一致で役員解任等の決議がなされた。原告は過去に自身も東京都内で総会を招集していたが、本件決議の取消しを求めて提訴した。
あてはめ
被上告会社は福島県に本店があるにもかかわらず、東京都で総会を開催しており、定款に別段の定めもない以上、招集地の法令規定に違反する。本件では出席株主が議決権の過半数に達し全員一致で決議されているが、福島県内に居住する株主が数十名存在することを踏まえれば、遠隔地での開催は株主の出席機会を奪う重大な瑕疵といえる。10年以上の慣例や原告が過去に同様の招集を行っていた事実は、法令違反の性質を重大でないものに変え、あるいは決議に影響を及ぼさないと判断する根拠としては不十分である。
結論
本件招集手続の違反は重大であり、決議に影響を及ぼさなかったともいえないため、裁量棄却は認められず、株主総会決議は取り消されるべきである。
実務上の射程
会社法下においても、招集場所の決定(298条1項2号)が株主の出席を著しく困難にする場合は取消事由となる。本判決は、議決権数や過去の慣例にかかわらず、開催地の適法性を厳格に判断する傾向を示しており、実務上、定款の根拠なく本店から離れた場所で総会を開催することは極めて高い取消リスクを伴う。答案では、裁量棄却の可否を検討する際の「重大性」の否定事例として活用できる。
事件番号: 昭和55(オ)193 / 裁判年月日: 昭和55年6月16日 / 結論: 棄却
二七〇〇株の株主に対する株主総会の招集通知に法定の招集期間より六日足りない瑕疵がある場合であつても、右株主に対しては代表取締役があらかじめ総会の議題を話しており、右株主も総会が右株主の住居と同一建物内で開催されることを熟知しながら意識的に出席を拒否したものであり、かつ、他の七三〇〇株の株主全員が出席して全会一致で解散の…
事件番号: 昭和29(オ)643 / 裁判年月日: 昭和31年11月15日 / 結論: 棄却
一 昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二五一条が削除された後は、裁判所に右削除前と同様な裁量権があると解すべきではない。 二 予め株主総会決議事項の通知をしなかつたというような軽微でない手続上の瑕疵があるときは、裁判所は右決議取消の請求を認容すべきである。
事件番号: 昭和43(オ)913 / 裁判年月日: 昭和44年12月18日 / 結論: 棄却
株主総会における数個の決議の取消を求める訴において、各決議の取消原因として、株主総会につき発せられた招集通知期間に判示のような著しい不足があるのみならず、一個の決議を除く他の決議については、招集通知に会議の目的たる事項の記載がなかつたという瑕疵があるときは、これらの瑕疵は軽微とはいえず、すべての決議について、その取消を…
事件番号: 昭和44(オ)89 / 裁判年月日: 昭和46年3月18日 / 結論: その他
一、株主総会招集の手続またはその決議の方法に性質、程度等からみて重大なかしがある場合には、そのかしが決議の結果に影響を及ぼさないと認められるようなときでも、裁判所は、右決議の取消請求を認容すべきであつて、これを裁量棄却することは許されない。 二、株主総会招集の手続が、その招集につき決定の権限を有する取締役会の有効な決議…