遺言により法定相続分を下回る相続分を指定された共同相続人の一人が、遺産を構成する特定不動産に法定相続分に応じた共同相続登記がされたことを利用し、右登記に係る自己の共有持分権を第三者に譲渡し、第三者が右持分の移転登記を受けたとしても、右第三者は右共同相続人の指定相続分に応じた持分を取得するにとどまる。
法定相続分を下回る相続分を指定された共同相続人の一人から法定相続分に応じた共有持分権を譲り受けた者が取得する持分の割合
民法177条,民法898条,民法902条
判旨
遺言により相続分が指定された場合、相続人は指定相続分を超える持分については無権利であり、登記に公信力がない以上、当該持分を譲り受けた第三者は指定相続分を超える部分の権利を取得できない。
問題の所在(論点)
遺言によって指定された相続分が法定相続分と異なる場合において、法定相続分に応じた登記を信じて持分を譲り受けた第三者は、指定相続分を超える部分についても権利を取得できるか。民法901条(指定相続分)と登記の公信力の有無が問題となる。
規範
不動産登記に公信力は認められない。そのため、共同相続人の一人が法定相続分に従った登記を経由した上で自己の持分を第三者に譲渡した場合であっても、当該相続人が遺言によって指定された持分を超えているときは、その超過部分は無権利の登記となる。譲受人は、譲渡人の真実の権利の範囲(指定相続分)を超えて権利を取得することはできない。
重要事実
Dが死亡し、Eを含む4名の子が土地を共同相続した。Dは遺言で相続分を指定しており、Eの指定相続分は80分の13であった。しかし、Eは各相続人の持分を法定相続分(4分の1、すなわち80分の20)とする相続登記が経由されていることを利用し、自己名義の4分の1の持分を上告人に譲渡し、持分移転登記を完了させた。これに対し、他の相続人である被上告人が上告人の取得範囲を争った。
事件番号: 平成19(受)1548 / 裁判年月日: 平成21年3月24日 / 結論: 棄却
相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がされた場合には,遺言の趣旨等から相続債務については当該相続人にすべてを相続させる意思のないことが明らかであるなどの特段の事情のない限り,相続人間においては当該相続人が相続債務もすべて承継したと解され,遺留分の侵害額の算定に当たり,遺留分権利者の法定相続分に応じた相…
あてはめ
本件において、譲渡人Eの真実の持分は、被相続人Dの遺言による指定に基づき80分の13である。登記上は4分の1(80分の20)の持分があるように表示されていたが、このうち指定相続分を超える80分の7(20/80 - 13/80)については、Eは無権利者といえる。我が国の法制上、登記に公信力は認められないため、上告人がこの表示を信頼して取引をしたとしても、無権利の部分についての権利取得は認められない。したがって、上告人が承継取得したのはEの正当な持分である80分の13に限られる。
結論
上告人が取得した持分は、遺言により指定された80分の13にとどまる。指定相続分を超える部分は無権利であり、登記の公信力が否定される結果、その部分の移転は認められない。
実務上の射程
本判決は、指定相続分が登記(法定相続分)と異なる場合における対抗関係の処理を示す。民法899条の2第1項(令和元年改正)により、現在は「指定相続分も法定相続分を超える部分は登記がなければ第三者に対抗できない」と明文化されたが、本判例の「登記に公信力がない」という基本原則は、無権利者からの譲受人を保護しない場面で依然として重要な法理である。答案上は、登記の公信力否定の文脈や、改正法との適用関係に留意して論述する。
事件番号: 平成17(受)883 / 裁判年月日: 平成18年7月14日 / 結論: その他
意思無能力者に代わって相続税を申告し納付した者について,法定代理人又は相続開始後に選任される後見人のいない意思無能力者には相続税申告書の提出義務がなく,所轄税務署長による相続税法(平成4年法律第16号による改正前のもの)35条2項1号に基づく税額の決定がされることもないという誤った解釈を前提として,事務管理に基づく費用…