不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給及び国民年金(老齢年金)は、その逸失利益として相続人が相続によりこれを取得し、加害者に対してその賠償を請求することができる。
不法行為により死亡した者の相続人が加害者に対し死亡者の得べかりし普通恩給及び国民年金(老齢年金)をその逸失利益として請求することの可否
恩給法9条1項1号,国民年金法(昭和60年法律第34号による改正前のもの)29条,民法709条,民法896条
判旨
不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給及び国民年金は、受給権者及びその家族に対する損失補償・生活保障を目的とするものであるから、逸失利益として相続の対象となり、加害者に対してその賠償を請求できる。
問題の所在(論点)
被害者が死亡したことによって将来受領できなくなった普通恩給及び国民年金(老齢年金)の逸失利益性は認められるか、またそれらは相続の対象となるか。
規範
公務員の普通恩給及び国民年金(老齢年金)は、受給権者本人の損失補償・生活保障のみならず、その収入に依存する家族の生活保障も目的とする。したがって、これらを受給する権利は一身専属性を有するものではなく、他人の不法行為により死亡した者が将来得られるはずであった額は、逸失利益として相続人が取得し、加害者に賠償請求することが可能である。
重要事実
不法行為により死亡した被害者Dは、生前、普通恩給及び国民年金の受給権を有していた。Dの相続人である上告人らが、加害者側に対し、死亡による損害賠償としてこれら年金等の喪失による逸失利益の支払いを求めた事案。原審は、これら受給権の喪失による損害を認めなかった一方、逸失利益算定における生活費控除の際、年金額を考慮して控除額を低く算出していた。
事件番号: 平成27(受)330 / 裁判年月日: 平成28年4月28日 / 結論: 棄却
破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡保険金受取人の破産財団に属する。
あてはめ
普通恩給及び国民年金は、受給権者本人だけでなくその家族の生活を支える機能を有する。本件被害者Dが受給すべきであった各年金等も、右趣旨に照らせば、不法行為がなければ得られたはずの財産的利益といえる。原審はこれらを独立の損害項目として認めなかった点に誤りがあるが、計算上、生活費控除額を年金受給分だけ減額(生活費控除率を年収の2割弱に設定)することで、実質的には就労可能年数内の損害として計上済みであると評価できる。
結論
普通恩給及び国民年金の逸失利益性は認められ、相続人がこれを承継する。ただし、本件では原審の算定手法(生活費控除における調整)により実質的な損害額は反映されており、自賠責保険金の受領額を超えないため、上告棄却とした。
実務上の射程
死亡逸失利益の算定において、老齢年金等の受給権が相続対象となることを明示した重要判例である。答案上は、逸失利益の肯定根拠として「受給権の生活保障的機能(家族の生計維持)」を論証に用いる。また、生活費控除との関係で、年金分をどう考慮するかという計算手法の妥当性についても言及の余地がある。
事件番号: 昭和61(オ)1534 / 裁判年月日: 昭和62年12月17日 / 結論: その他
上訴審が本案判決の一部を変更する場合においては、民訴法一九八条二項の申立のうち変更しない部分に対応する申立部分を棄却する旨の裁判をすべきである。
事件番号: 平成9(オ)2117 / 裁判年月日: 平成10年3月24日 / 結論: 破棄差戻
民法九〇三条一項の定める相続人に対する贈与は、右贈与が相続開始よりも相当以前にされたものであって、その後の時の経過に伴う社会経済事情や相続人など関係人の個人的事情の変化をも考慮するとき、減殺請求を認めることが右相続人に酷であるなどの特段の事情のない限り、同法一〇三〇条の定める要件を満たさないものであっても、遺留分減殺の…
事件番号: 平成7(オ)160 / 裁判年月日: 平成11年4月22日 / 結論: その他
甲と乙とが乗車中の自動二輪車の交通事故により死亡した甲の相続人が,捜査機関が甲を運転者と認定したことを知りながら,乙を運転者と主張して乙に対して損害賠償請求訴訟を提起した場合であっても,右主張に沿う事故直前の目撃者らの供述があり,現場の状況,自動二輪車の損傷状況などの客観的証拠からは運転者を特定することが必ずしも容易で…