銀行の設置した現金自動支払機を利用して預金者以外の者が預金の払戻しを受けたとしても、真正なキャッシュカードが使用され、正しい暗証番号が入力されていた場合には、銀行による暗証番号の管理が不十分であったなど特段の事情がない限り、銀行は、免責約款により免責される。
預金者以外の者が真正なキャッシュカードを使用し正しい暗証番号を入力して現金自動支払機から預金の払戻しを受けた場合と免責約款による銀行の免責
民法91条,民法478条
判旨
現金自動支払機による預金払戻において、真正なカードと正しい暗証番号が使用された場合、銀行による暗証番号管理の不備等がない限り、銀行は免責約款により免責される。
問題の所在(論点)
真正なキャッシュカードと正しい暗証番号を用いた第三者への払戻しについて、免責約款の適用による銀行の免責が認められるか。また、当時の磁気カードの安全性が免責約款の効力を否定するほど不十分であったといえるか。
規範
銀行の設置した現金自動支払機(ATM)において、預金者以外の者が預金の払戻しを受けた場合であっても、①真正なキャッシュカードが使用され、②正しい暗証番号が入力されていたときは、銀行による暗証番号の管理が不十分であったなど「特段の事情」がない限り、銀行は免責約款により免責される。また、当時の技術水準に照らし、暗証番号の解読に相応の知識・技術を要するシステムであれば、直ちに免責約款が無効となるほどの安全性の欠如はない。
重要事実
上告人以外の第三者が、上告人名義の真正なキャッシュカードと正しい暗証番号を用いて、被上告人(銀行)のATMから預金の払戻しを受けた。当時のカードの磁気ストライプには暗証番号がコード化して記録されており、市販のカードリーダー等を用いれば解読可能な状態であった。上告人は、システムの安全性が欠如しているため免責約款は無効であり、銀行は支払の責を免れないと主張して争った。
あてはめ
本件では、真正なカードと正しい暗証番号が使用されており、銀行側に管理不十分等の特段の事情は認められない。また、当時の磁気ストライプの解読にはコンピューターに関する相応の知識と技術が必要であり、本件支払当時の昭和56年頃においてその技術は一般的ではなかった。したがって、システムが免責約款の効力を否定するほど安全性を欠くとはいえず、免責約款は有効に機能する。
結論
銀行は免責約款により免責されるため、上告人の預金払戻請求は認められない(上告棄却)。
実務上の射程
ATM取引における免責約款の有効性と適用範囲を示したリーディングケースである。答案上は、債権の準占有者(民法478条)の議論と並び、約款による免責の可否が問われる場面で「特段の事情」の有無を検討する際に引用する。なお、預金者保護法の制定により、現在は盗難・偽造カードによる被害救済の枠組みが別途存在することに留意が必要である。
事件番号: 昭和50(オ)587 / 裁判年月日: 昭和53年5月1日 / 結論: 棄却
預金者のために架空人名義の定期預金の預入行為をした者について、同人が右預金につき届け出られた印章を所持しており、また、右預金の預金証書を紛失したと称し、その紛失の届出が同人からされている旨の警察署の証明書を銀行に提出して預金証書の再交付を受けるなど判示のような事実があつても、これら事実から直ちにこの者が定期預金債権の準…