出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達があった後にする補正が特許法六四条一項ただし書の要件を具備するか否かは、当該補正の時点における明細書又は図面を基準として判断されるべきである。
出願公告をすべき旨の決定の謄本の送達があった後にする補正が特許法六四条一項ただし書の要件を具備するか否かを判断する際に基準となるべき明細書又は図面
特許法64条
判旨
特許法64条1項(現行法17条の2相当)に基づく明細書等の補正の要件は、補正時点における明細書または図面を基準として判断すべきである。また、発明の要旨認定および先願発明との同一性判断において、明細書の特許請求の範囲のみならず発明の詳細な説明の記載を参酌することは正当である。
問題の所在(論点)
出願公告後の補正において、その適法性を判断する基準となる明細書等はどの時点のものか。また、発明の要旨認定において、特許請求の範囲だけでなく発明の詳細な説明を参酌して先願発明との同一性を判断することは許されるか。
規範
特許出願の補正において、その要件を具備するか否かは、補正の時点における明細書及び図面の記載を基準として判断されるべきである。また、発明の要旨認定にあたっては、特許請求の範囲の記載を基礎としつつ、必要に応じて明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して、技術的意義を客観的に確定すべきである。
重要事実
上告人は、出願公告決定の謄本送達後に、願書に添付した明細書等の補正を行った。しかし、審査官はこの補正を却下し、特許を認めなかった。原審は、補正時(出願公告時)の明細書等を基準に補正の適否を判断し、本願発明の要旨を出願公告時の特許請求の範囲に基づき認定した。さらに、先願発明の明細書における発明の詳細な説明を参酌し、本願発明が先願発明と同一であると判断して上告を棄却したため、上告人が基準時や認定手法の誤りを主張して上告した。
あてはめ
特許法64条1項にいう「願書に添附した明細書又は図面」は、文言上、補正対象となる時点のものを指すと解するのが合理的である。本件では、上告人が補正を行おうとした時点での明細書等はすでに出願時のものから変更された「出願公告時」の状態にあった。したがって、原審が公告時の記載を基準に補正の許否を判断したことに誤りはない。また、先願発明の構成について、特許請求の範囲の記載が「オレフィンの重合若しくは共重合用触媒」となっている場合、詳細な説明を参酌することで、その具体的構成が特定の製造方法による触媒成分と有機金属化合物を組み合わせたものであると認定できる。本願発明の構成要素がこれと相違ない以上、実質的に同一の発明といえる。
結論
補正の要件具備の判断は、補正時点における明細書等を基準とすべきである。また、詳細な説明を参酌してなされた発明の同一性判断は正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
現行法下の補正(17条の2)や訂正(126条、134条の2)においても、補正の制限を判断する際の比較対象となる「直前の状態」を特定する実務上の基礎となる。特に、発明の要旨認定において明細書全体の記載を参酌して技術的範囲を確定する手法は、特許法70条の解釈とも整合し、答案作成における規範として汎用性が高い。
事件番号: 昭和30(オ)863 / 裁判年月日: 昭和33年8月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】発明の新規性を判断する際の発明の技術的範囲の確定について、特許請求の範囲の記載を基準としつつも、明細書全般(発明の詳細な説明等)の記載を参酌して判断することは適法である。 第1 事案の概要:上告人の本件特許出願(昭和24年第10897号)に対し、特許庁は先行する特許(第140115号)に基づき新規…