同時破産廃止の決定の確定後に、破産債権に基づき、その支払期が破産宣告の前から右宣告の後に及ぶ破産者の給料等の債権に対してされた強制執行により右破産債権についてされた弁済は、その後に破産者を免責する決定が確定しても、法律上の原因を失わない。
同時破産廃止の決定の確定から免責決定の確定までの間にされた破産財団及び新得財産に対する強制執行による破産債権への弁済と不当利得の成否
民法703条,破産法366条ノ12
判旨
破産宣告(旧法)と同時にされた破産廃止決定の確定後、免責決定の確定前に破産債権に基づき行われた給料債権等への強制執行は適法であり、その後の免責決定によって遡及的に無効となるものではない。
問題の所在(論点)
破産宣告と同時に破産廃止決定がなされた後、免責決定が確定するまでの間に、破産債権に基づきなされた強制執行の適法性、およびその後の免責決定による遡及的無効(不当利得の成否)が問題となる。
規範
破産廃止決定の確定により、破産手続の拘束力は消滅するため、破産債権者が債務者の一般財産に対して強制執行を行うことは禁止されない。また、免責決定は将来に向かって債務を自然債権化させる効力を有するにとどまり、決定確定前になされた有効な強制執行の結果を遡及的に無効(不当利得)とする効力まではない。
重要事実
破産者(上告人)に対し破産宣告がなされると同時に、破産廃止決定がなされ、これが確定した。破産債権者(被上告人)は、この廃止決定確定後、破産者の将来の給料及び賞与の各債権に対し、破産債権に基づき強制執行を実施した。その後、破産者について免責許可決定が確定したため、破産者は当該強制執行による弁済金が法律上の原因を欠くと主張して、不当利得返還を請求した。
あてはめ
本件では破産廃止決定が確定しているため、破産手続は終了しており、破産法上の執行禁止の効力は及ばない。したがって、免責決定前になされた給料債権等への強制執行は手続上適法である。次に、免責決定の効力について検討すると、免責は債務の責任を免除するものであり、既になされた有効な弁済の法的効力を覆すものではない。よって、強制執行により得られた弁済金は、その後に免責が確定しても法律上の原因を欠くことにはならず、不当利得は成立しないと解される。
結論
免責決定の確定前に適法になされた強制執行による弁済は、免責決定によって遡って法律上の原因を欠くことにはならない。
実務上の射程
現行法(破産法100条、249条等)下でも同様の理が妥当する。同時廃止事件において、免責許可決定の確定による強制執行の中止・失効等が生じる前に、有効に終了した執行手続の結果を不当利得として取り戻すことはできないという実務上の規範となる。
事件番号: 昭和62(オ)253 / 裁判年月日: 平成6年2月8日 / 結論: 破棄自判
恩給受給者甲が国民金融公庫(乙)からの借入金の担保に供した恩給につき国が乙にその払渡しをした後に、甲に対する恩給裁定が取り消されたとしても、乙は甲に対して恩給を担保に貸付けをすることを法律上義務付けられており、しかも恩給裁定の有効性については乙自ら審査することはできず、これを有効なものと信頼して扱わざるを得ないものであ…
事件番号: 平成22(受)16 / 裁判年月日: 平成23年12月15日 / 結論: 破棄自判
会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行は,同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を,法定の手続によらず同会社の債務の弁済に充当し得る旨を定める銀行取引約定に基づき,同会社の債務の弁済に充当することができる。 (補足意見がある。)
事件番号: 平成22(受)1784 / 裁判年月日: 平成23年7月7日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において,上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんにより,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転する,あるいは,当該…
事件番号: 平成17(受)1344 / 裁判年月日: 平成18年1月23日 / 結論: 棄却
1 破産者は,破産手続中に自由財産の中から破産債権に対して任意の弁済をすることを妨げられない。 2 地方公務員共済組合の組合員の破産手続中にその自由財産である退職手当の中から地方公務員等共済組合法115条2項所定の方法により組合員の組合に対する貸付金債務についてされた弁済が,組合員による任意の弁済であるというためには,…