1 破産者は,破産手続中に自由財産の中から破産債権に対して任意の弁済をすることを妨げられない。 2 地方公務員共済組合の組合員の破産手続中にその自由財産である退職手当の中から地方公務員等共済組合法115条2項所定の方法により組合員の組合に対する貸付金債務についてされた弁済が,組合員による任意の弁済であるというためには,組合員が,破産宣告後に,自由財産から破産債権に対する弁済を強制されるものではないことを認識しながら,その自由な判断により,上記方法をもって上記貸付金債務を弁済したものということができることが必要である。
1 破産者が破産手続中に自由財産の中から破産債権に対して任意の弁済をすることの可否 2 地方公務員共済組合の組合員の破産手続中に自由財産である退職手当の中から組合の破産債権に対して地方公務員等共済組合法115条2項所定の方法によりされた弁済が組合員による任意の弁済であるというための要件
(1,2につき)旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)6条,旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)16条,破産法34条,破産法100条 (2につき) 地方公務員等共済組合法115条2項
判旨
破産者が破産宣告後に自由財産から破産債権に対して行った弁済が有効となるには、強制されないことを認識した上での真に自由な判断によるもの(厳格な任意性)が必要であり、地共法上の控除払込みにつき合意がない場合は不当利得となる。
問題の所在(論点)
破産宣告後、自由財産である退職手当からなされた地共法上の弁済方法(控除払込み)が、破産債権に対する「任意の弁済」として法律上の原因を有するか。
規範
破産手続中、破産債権者は破産者の自由財産に対して強制執行等はできないが、破産者が自由な判断により自由財産から任意に弁済することは妨げられない。もっとも、自由財産は破産者の更生と生活保障のためのものであるから、任意の弁済に当たるか否かは厳格に解すべきであり、少しでも強制的な要素を伴う場合は否定される。具体的には、破産者が、自由財産からの弁済を強制されるものではないことを認識しながら、その自由な判断により弁済したといえることが必要である。
事件番号: 平成17(オ)184 / 裁判年月日: 平成18年12月21日 / 結論: その他
破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際して破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をし,上記賃料等の現実の支払を免れたことにより,敷金返還請求権の質権者に対し不当利得返還義務を負う場合において,法律上の原因の有無が,破産債権者のために破産財団の減少を防ぐという破産管財人の職務上の義務と…
重要事実
地方公務員であった被上告人は、上告人(共済組合)から貸付けを受けていたが、平成14年に破産宣告を受けた。その後、被上告人が退職した際、給与支給機関は地方公務員等共済組合法115条2項に基づき、退職手当の中から貸付金残債務相当額(約431万円)を控除して上告人に払い込んだ。しかし、被上告人はこの払込みについて、上告人等との間で合意をしていなかった。
あてはめ
地共法115条2項は単なる弁済代行の方法を定めたものにすぎず、組合に優先的な地位を付与するものではない。本件では、被上告人が本件払込みに際して合意をした事実はなく、破産宣告後に弁済を強制されないことを認識した上で自由な判断により当該弁済方法を選択したとはいえない。他に任意性を肯定すべき事情もないため、本件払込みは「任意の弁済」に当たらない。
結論
本件払込みは任意の弁済とはいえず、上告人は法律上の原因なく利得したことになる。したがって、被上告人の不当利得返還請求は認められる。
実務上の射程
破産者の自由財産(差押禁止債権等)からの弁済が、破産債権の個別執行禁止の原則に反しないかという文脈で用いる。実務上、公務員等の共済貸付の控除について、破産宣告後の「任意性」を極めて厳格に(合意の存在や強制されないことの認識まで)要求する射程を持つ。
事件番号: 昭和63(オ)1457 / 裁判年月日: 平成2年7月19日 / 結論: 破棄差戻
給与支給機関が、国家公務員等共済組合法一〇一条二項に基づき、D組合の組合員である国家公務員の給与から未返済の貸付金に相当する金額を控除してこれを右組合に払い込む行為は、破産法七二条二号による否認の対象となる。
事件番号: 平成16(受)424 / 裁判年月日: 平成18年1月24日 / 結論: 破棄差戻
1 利息制限法所定の制限を超える約定利息と共に元本を分割返済する約定の金銭消費貸借に,債務者が元本及び約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の約定が付されている場合,同約定中,債務者が約定利息のうち制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は,同法1条1項の趣旨に反して無効であ…
事件番号: 令和4(行ヒ)317 / 裁判年月日: 令和5年12月12日 / 結論: 破棄自判
1 公職選挙法251条の規定により遡って大阪市の議会の議員の職を失った当選人は、同市に対し、当該当選人を唯一の所属議員とする会派の行った大阪市会政務活動費の交付に関する条例(平成13年大阪市条例第25号)5条所定の政務活動に関し、不当利得返還請求権を有することはない。 2 公職選挙法251条の規定により遡って大阪市の議…
事件番号: 平成26(受)1817 / 裁判年月日: 平成27年6月1日 / 結論: 破棄差戻
債務者が異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をした場合において,譲渡人に対抗することができた事由の存在を譲受人が知らなかったとしても,このことについて譲受人に過失があるときには,債務者は,当該事由をもって譲受人に対抗することができる。