給与支給機関が、国家公務員等共済組合法一〇一条二項に基づき、D組合の組合員である国家公務員の給与から未返済の貸付金に相当する金額を控除してこれを右組合に払い込む行為は、破産法七二条二号による否認の対象となる。
給与支給機関が国家公務員等共済組合法一〇一条二項に基づきD組合の組合員である国家公務員の給与から貸付金残額を控除して右組合に払い込む行為と破産法七二条二号による否認
国家公務員等共済組合法101条2項,破産法72条2号
判旨
国家公務員等共済組合法に基づき給与支給機関が組合員に代わって行う貸付金の払込は、弁済の代行にすぎず、破産法上の否認権行使の対象となる。また、退職手当が支払われた後は差押禁止の効力が及ばないため、支払われた金員は破産財団を構成し、その弁済は否認の対象となり得る。
問題の所在(論点)
1.給与支給機関が法律(国公共済法101条2項)に基づいて行う貸付金の控除払込が、破産法上の否認の対象となる「債務者(またはこれと同一視し得る者)の行為」にあたるか。 2.差押禁止債権である退職手当から支払われた金員による弁済について、否認権を行使できるか。
規範
1.給与支給機関による貸付金の払込:国家公務員等共済組合法101条2項に基づく払込は、組合の財源確保等を目的とするが、他の債権に対する優先権を認める規定はなく、給与支給機関が債務の「弁済を代行」するものにすぎない。したがって、法定の効力による払込であっても、破産法上の否認の対象となる。 2.差押禁止債権との関係:退職手当が支払われた時点で債権は消滅し、民事執行法152条2項による差押禁止の適用はなくなる。よって、支払済の金員は破産財団を構成し、その金員による弁済は、差押禁止の範囲内(4分の3)であっても否認の対象となり得る。
重要事実
公務員Eは、多額の債務により自己破産を申し立てた。Eの退職に際し、所属機関の支出官(国)は、法律に基づき、Eの退職手当から共済組合への未返済貸付金約510万円を控除し、組合に直接払い込んだ(本件払込)。その直後、Eは破産宣告を受け、破産管財人である上告人が本件払込の否認を求めて提訴した。原審は、本件払込が「法律上の義務」に基づくこと、および「差押禁止の範囲内」であることを理由に、否認の対象外であると判断した。
事件番号: 昭和62(オ)1083 / 裁判年月日: 平成2年7月19日 / 結論: 破棄自判
給与支給機関が、地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づき、D組合の組合員である地方公務員の給与から未返済の貸付金に相当する金額を控除してこれを右組合に払い込む行為は、破産法七二条二号による否認の対象となる。
あてはめ
1.国公共済法101条2項は「組合員に代わって」払い込むと規定しており、これは弁済の代行を定めたものにすぎない。組合に優先弁済権を付与したものではないから、債務者による弁済と同一視すべきであり、破産債権者間の平等を図る否認制度の趣旨が及ぶ。 2.本件払込により退職手当債権は消滅し、現金化されている。現実に支払われた金員はもはや差押禁止財産(自由財産)ではなく、破産財団に帰属すべき財産である。したがって、特定の債権者に偏頗な弁済をした以上、否認の対象から除外される理由はない。
結論
本件払込は、破産法上の否認(偏頗行為否認)の対象となり得る。原審が否認の対象外とした判断には法令の解釈適用の誤りがあるため、破棄差し戻しを免れない。
実務上の射程
法定の控除決済システムであっても、実質的に特定の債権者に対する偏頗な弁済(代行弁済)として機能する場合には、否認権が及ぶことを示した。また、差押禁止債権が弁済に充てられた場合、受領後の金員について「自由財産ゆえに否認対象外」とする反論を封じる際、標準的な論拠として活用できる。
事件番号: 昭和59(オ)454 / 裁判年月日: 平成2年10月2日 / 結論: 棄却
一 給与支給機関が、地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づき、地方公務員共済組合の組合員である地方公務員の給与から未返済の貸付金に相当する金額を控除してこれを右組合に払い込む行為は、破産法七二条二号による否認の対象となる。 二 給与支給機関が、地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づき、地方公務員共済組合の組合員であ…
事件番号: 平成17(受)1344 / 裁判年月日: 平成18年1月23日 / 結論: 棄却
1 破産者は,破産手続中に自由財産の中から破産債権に対して任意の弁済をすることを妨げられない。 2 地方公務員共済組合の組合員の破産手続中にその自由財産である退職手当の中から地方公務員等共済組合法115条2項所定の方法により組合員の組合に対する貸付金債務についてされた弁済が,組合員による任意の弁済であるというためには,…
事件番号: 昭和33(オ)689 / 裁判年月日: 昭和37年11月20日 / 結論: 破棄差戻
一 約束手形の裏書人たる破産者が被裏書人から手形を受け戻すにつき手形金額の支払をした場合には破産法第七三条第一項は類推適用のされない。 二 破産法第七三条第一項にいう「手形ノ支払」とは、約束手形にあつては振出人の支払を指し、「債務者ノ一人又ハ数人ニ対スル手形上ノ権利」とは、手形所持人の前者に対する遡及権を指すにほかなら…
事件番号: 平成11(受)766 / 裁判年月日: 平成13年3月27日 / 結論: その他
1 加入電話契約者以外の者がいわゆるダイヤルQ2事業における有料情報サービスを利用した場合には,加入電話契約者は,情報料債務を自ら負担することを承諾しているなど特段の事情がない限り,情報提供者に対する情報料の支払義務を負わない。 2 加入電話契約者甲以外の者が利用したいわゆるダイヤルQ2事業における有料情報サービスに係…