給与支給機関が、地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づき、D組合の組合員である地方公務員の給与から未返済の貸付金に相当する金額を控除してこれを右組合に払い込む行為は、破産法七二条二号による否認の対象となる。
給与支給機関が地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づきD組合の組合員である地方公務員の給与から貸付金残額を控除して右組合に払い込む行為と破産法七二条二号による否認
地方公務員等共済組合法115条2項,破産法72条2号
判旨
地方公務員等共済組合法115条2項に基づく給与等からの貸付金弁済(払込)は、同条が優先弁済権を付与したものではないため、破産法上の否認権行使の対象となる。
問題の所在(論点)
地方公務員等共済組合法115条2項に基づく、給与支給機関から組合への貸付金債務の払込行為が、破産法上の否認権行使の対象となるか。同条による法的強制力が、否認の対象外とされるべき「破産者の関与しない第三者の行為」にあたるかが問題となる。
規範
地方公務員等共済組合法115条2項の規定は、組合の財源確保を目的に、給与の直接払・全額払原則との関係で払込方法を法定したにすぎない。同条は、他の債権に対する優先性を規定しておらず、その実質は「組合員に代わって」行われる債務の弁済代行である。したがって、同規定に基づく払込であっても、破産手続上、他の一般破産債権に優先して弁済を受け得る根拠とはならず、否認権行使の対象となり得る。
重要事実
教諭Fは自己破産を申し立てた翌日に退職した。Fに対し貸付金債権を有していた共済組合(被上告人)は、地方公務員等共済組合法115条2項に基づき、給与支給機関からFの退職手当全額(約420万円)をFに代わって弁済として受け取った(本件払込)。当時、組合はFが破産申立をした事実を知っていた。その後、Fの破産宣告がなされ、破産管財人(上告人)が選任された。管財人は、退職手当の4分の1相当額について、破産法上の否認権(旧破産法72条2号、現行162条1項1号参照)を主張し、組合に支払を求めた。
事件番号: 昭和59(オ)454 / 裁判年月日: 平成2年10月2日 / 結論: 棄却
一 給与支給機関が、地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づき、地方公務員共済組合の組合員である地方公務員の給与から未返済の貸付金に相当する金額を控除してこれを右組合に払い込む行為は、破産法七二条二号による否認の対象となる。 二 給与支給機関が、地方公務員等共済組合法一一五条二項に基づき、地方公務員共済組合の組合員であ…
あてはめ
本件払込は、形式的には法律の規定(地共法115条2項)に基づく給与支給機関の行為であるが、その実質は「組合員に代わって」行う弁済の代行にほかならない。同条は組合に優先弁済権を与える趣旨ではないから、破産宣告前後のタイミングでなされた特定の債権者に対する偏頗弁済としての性格を有する。被上告人は払込時、Fの破産申立という支払停止の事実を知っていたのであるから、受益者の主観的要件も充足する。したがって、法定の払込方法であることは、破産法上の否認権行使を妨げる理由にはならない。
結論
本件払込は否認権行使の対象となる。したがって、破産管財人の請求を認容した第一審判決を相当とし、組合側の控訴を棄却すべきである。
実務上の射程
法定の控除・払込制度が存在する場合でも、それが実質的に債務の弁済代行にすぎず、実体法上の優先順位を変動させる規定でない限り、偏頗弁済として否認の対象となり得ることを示した。答案上は、否認権の対象となる「債務者の行為」の範囲を実質的に解釈する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和63(オ)1457 / 裁判年月日: 平成2年7月19日 / 結論: 破棄差戻
給与支給機関が、国家公務員等共済組合法一〇一条二項に基づき、D組合の組合員である国家公務員の給与から未返済の貸付金に相当する金額を控除してこれを右組合に払い込む行為は、破産法七二条二号による否認の対象となる。
事件番号: 昭和33(オ)689 / 裁判年月日: 昭和37年11月20日 / 結論: 破棄差戻
一 約束手形の裏書人たる破産者が被裏書人から手形を受け戻すにつき手形金額の支払をした場合には破産法第七三条第一項は類推適用のされない。 二 破産法第七三条第一項にいう「手形ノ支払」とは、約束手形にあつては振出人の支払を指し、「債務者ノ一人又ハ数人ニ対スル手形上ノ権利」とは、手形所持人の前者に対する遡及権を指すにほかなら…