民法七二四条後段の規定は、不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたものである。
民法七二四条後段の法意
民法724条
判旨
民法724条後段(旧法)の20年の期間は除斥期間であり、不法行為の日から同期間が経過したときは、当事者の主張を待たず、権利は法律上当然に消滅する。
問題の所在(論点)
民法724条後段(旧法)に定める「不法行為の時から20年」という期間の法的性質(消滅時効か除斥期間か)、および裁判所による職権適用の可否が問題となる。
規範
民法724条後段(旧法)の規定は、不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めたものである。除斥期間である以上、時効の利益の放棄や中断に関する規定は適用されず、期間の経過により権利は当然に消滅する。また、裁判所は当事者の主張がなくとも、当該期間の経過により請求権が消滅したと判断すべきである。
重要事実
昭和16年5月、旧陸軍少尉である被上告人は、上等兵である上告人に対し、初年兵の不始末の責任を問うとして顔面を20回以上殴打し、軍靴で蹴り続ける等の激しい暴行を加えた。上告人は全治1ヶ月の重傷を負い、難聴の後遺症が残った。上告人は不法行為から約41年が経過した昭和57年4月に本訴を提起した。原審は、同期間を消滅時効とし、被上告人による債務承認(時効利益の放棄)を否定して請求を棄却したが、上告人はこれを不服として上告した。
事件番号: 昭和49(行ツ)109 / 裁判年月日: 昭和50年9月11日
【結論(判旨の要点)】不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間について、民法724条後段(改正前)の20年は除斥期間であり、時効の中断(更新)や停止に関する規定は適用・類推適用されない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人に対し、不法行為(医療事故等)を原因とする損害賠償請求訴訟を提起した。しかし、当該不法行為が…
あてはめ
本件における不法行為の日である昭和16年5月20日から、本訴提起の昭和57年4月28日までの間には、約41年という期間が経過している。民法724条後段を除斥期間と解する以上、同期間の経過によって損害賠償請求権は法律上当然に消滅する。たとえ被上告人による債務承認の主張(時効利益の放棄に相当する主張)があったとしても、除斥期間の性質上、権利の消滅を妨げるものではない。また、除斥期間は公益的観点から定められた期間であるため、当事者による援用を待たずに裁判所が判断の基礎とすべきである。
結論
本件損害賠償請求権は20年の除斥期間経過により消滅しているため、上告人の請求を棄却した原審の結論は正当として、上告を棄却した。
実務上の射程
改正民法下でも20年の期間(形成権等)が除斥期間か否かの議論で参照される。本判例は不法行為に関するものであるが、除斥期間であれば「援用不要」「職権考慮」「中絶(更新)や停止の余地なし」という法的効果を導く際の確立した規範として答案に用いる。
事件番号: 平成5(オ)708 / 裁判年月日: 平成10年6月12日 / 結論: その他
不法行為の被害者が不法行為の時から二〇年を経過する前六箇月内において右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から六箇月内に右不法行為による損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法一五八条の法意に照ら…