一 土地のコンクリート面にビスで固定されたベーパーライザー(気化器)にガスボンベから高圧ゴムホース及び導管によって接続されるなど判示のような構造を有し、一体として機能を果たす液化石油ガス消費設備は、高圧ゴムホースを含め、民法七一七条にいう「土地ノ工作物」に当たる。 二 液化石油ガスの供給者が、自らが専ら保守、管理及び操作を行うとの合意の下にその所有するガス消費設備を被供給者に貸与して液化石油ガスを供給し、ガスボンベの取替えのため被供給者の包括的な許諾を得て定期的にその建物の敷地内の設置箇所に出入りしていたという事実関係の下においては、供給者はガス消費設備について民法七一七条にいう「占有者」に当たる。
一 液化石油ガス消費設備が民法七一七条にいう「土地ノ工作物」に当たるとされた事例 二 液化石油ガスの供給者がガス消費設備について民法七一七条にいう「占有者」に当たるとされた事例
民法717条
判旨
建物外壁に固定された導管等からなるガス消費設備は「土地の工作物」に当たり、無償貸与中であっても保守・管理を専ら行う合意がある者は「占有者」に該当する。
問題の所在(論点)
1. 建物外壁に固定され、着脱可能なホースを含むガス消費設備が「土地の工作物」(民法717条1項)に当たるか。 2. 設備を無償貸与しつつ保守・管理を専任していた所有者が、同項の「占有者」に当たるか。
規範
1. 民法717条1項にいう「土地の工作物」とは、土地に接着して設置された人工的作業による施設を指し、複数の機器や部品が一体として機能を果たす場合は全体として一個の工作物を構成する。 2. 同項の「占有者」とは、工作物を事実上支配し、その設置・保存の瑕疵を除去し得る地位にある者をいう。所有者が他者に無償貸与している場合であっても、保守・管理及び操作を専ら所有者が行う合意があり、現実に直接的・具体的な支配を及ぼしているときは、当該所有者が占有者に当たる。
重要事実
事件番号: 昭和33(オ)510 / 裁判年月日: 昭和37年11月8日 / 結論: 棄却
三五〇〇ボルト以下の高圧架空送電線のゴム被覆が破損していたため感電事故が生じた場合、行政上の取締規定からは右電線にゴム被覆を用いることが必要でなく、また、終戦後の国内物資の欠乏からその電力会社管下の破損したゴム被覆高圧送電線を全部完全なものに取り替えることは極めて困難な状況にあつても、事故現場の電線の修補することが絶対…
ガス販売業者(上告人)は、顧客(被上告人)に対し、ボンベ、導管、ベーパーライザー等からなるガス消費設備を無償で貸与していた。本設備は、導管が建物の軒下や外壁に金具で固定され、ベーパーライザーはコンクリート面にビスで固定されていた。また、高圧ゴムホースは比較的容易に着脱可能だが、年単位で継続使用される構造であった。契約上、設備の保守・管理・操作は専ら上告人が行うこととされ、上告人の従業員が定期的に出入りして管理を行っていた。
あてはめ
1. 本件設備は、導管が建物外壁に金具固定され、ベーパーライザーもコンクリートに固定されている。着脱容易なゴムホースも、一体として機能を果たす設備の一部として数年間継続使用されるものである。したがって、これら全体が一体として「土地の工作物」を構成する。 2. 上告人は所有者として無償貸与していたが、合意により保守・管理・操作の権限を一手に引き受けていた。従業員による定期的出入りを通じ、本件設備に対して「直接的、具体的な支配」を及ぼしていたといえるから、瑕疵による危険を防止すべき「占有者」に該当する。
結論
本件ガス消費設備は土地の工作物に当たり、その保守・管理を専ら行っていた上告人は民法717条1項の占有者として責任を負う。
実務上の射程
工作物責任における「工作物」の概念を、複数の器具が結合した設備全体に広げた点、及び「占有者」の認定において、形式的な貸借関係よりも実質的な管理・支配権限の有無を重視した点に意義がある。賃貸借や使用貸借が介在する場合の責任主体を検討する際の重要指標となる。
事件番号: 昭和29(オ)848 / 裁判年月日: 昭和31年12月18日 / 結論: 破棄差戻
国が連合国占領軍の接収通知に応じ、建物をその所有者から賃借してこれを同軍の使用に供した場合には、国はその建物の設置保存に関する瑕疵に基因する損害につき、民法第七一七条にいう占有者としてその責に任ずべきである。