国が連合国占領軍の接収通知に応じ、建物をその所有者から賃借してこれを同軍の使用に供した場合には、国はその建物の設置保存に関する瑕疵に基因する損害につき、民法第七一七条にいう占有者としてその責に任ずべきである。
いわゆる接収建物の賃借人たる国と民法第七一七条にいう占有者
民法717条
判旨
民法717条1項にいう工作物の占有者には、直接占有者のみならず間接占有者も含まれるため、国が建物を賃借して進駐軍に使用させていた場合、国は間接占有者として工作物責任を負う。
問題の所在(論点)
民法717条1項の工作物責任における「占有者」に、建物を賃借して第三者に使用させている間接占有者が含まれるか。
規範
民法717条にいう「占有者」とは、工作物を事実上支配し、その瑕疵を修補して損害の発生を防止し得る関係にある者を指すが、これには直接占有者だけでなく間接占有者も含まれる。法文上、間接占有者を除外すべき根拠はなく、実質上もその責任を肯定すべき理由があるためである。
重要事実
国(被上告人)は、連合国進駐軍の接収通知に基づき、所有者から本件建物を借り受け、これを進駐軍の使用に供した。進駐軍が事実上、建物を占有支配し、修理工事の要否や方法についても指揮監督を行っていた。かかる状況下で、建物の保存の瑕疵に基因して上告人らの子(E)が死亡する事故が発生した。
事件番号: 昭和40(オ)679 / 裁判年月日: 昭和43年11月15日 / 結論: 棄却
甲が交通事故により乙会社の代表者丙を負傷させた場合において、乙会社がいわゆる個人会社で、丙に乙会社の機関としての代替性がなく、丙と乙会社とが経済的に一体をなす等判示の事実関係があるときは、乙会社は、丙の負傷のため利益を逸失したことによる損害の賠償を甲に請求することができる。
あてはめ
国は、進駐軍の接収通知に応じて建物を所有者から借り受けており、賃借人としての地位にある。たとえ進駐軍が直接的に建物を占有支配し、修理等の実質的な指揮権を行使していたとしても、国は依然として賃借人であり、建物について当然に間接占有を有している。したがって、民法717条の占有者に該当すると解される。
結論
国は本件建物の間接占有者として、民法717条1項所定の占有者に該当し、損害賠償責任を免れない。
実務上の射程
工作物責任の主体である「占有者」の範囲を確定した重要な判例である。答案上は、直接占有者に損害防止に必要な注意を尽くしたという免責が認められる場合であっても、間接占有者がさらに重い「所有者としての無過失責任」を負う前段階として、まず占有者としての責任を検討する際に、本判例を根拠に間接占有者の責任を肯定することができる。
事件番号: 昭和47(オ)1067 / 裁判年月日: 昭和49年3月22日 / 結論: 棄却
未成年者が責任能力を有する場合であつても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法七〇九条に基づく不法行為が成立する。
事件番号: 昭和33(オ)510 / 裁判年月日: 昭和37年11月8日 / 結論: 棄却
三五〇〇ボルト以下の高圧架空送電線のゴム被覆が破損していたため感電事故が生じた場合、行政上の取締規定からは右電線にゴム被覆を用いることが必要でなく、また、終戦後の国内物資の欠乏からその電力会社管下の破損したゴム被覆高圧送電線を全部完全なものに取り替えることは極めて困難な状況にあつても、事故現場の電線の修補することが絶対…