未成年者が責任能力を有する場合であつても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法七〇九条に基づく不法行為が成立する。
責任能力のある未成年者の不法行為と監督義務者の不法行為責任
民法709条,民法714条
判旨
未成年者が責任能力を有する場合でも、監督義務者の義務違反と未成年者の不法行為による結果との間に相当因果関係が認められるときは、監督義務者に民法709条に基づく不法行為責任が成立する。
問題の所在(論点)
未成年者が責任能力を有する場合、民法714条の適用はないが、別途一般不法行為(民法709条)に基づき監督義務者の責任を追及できるか。
規範
未成年者が自己の行為の責任を弁識するに足りる知能(責任能力)を備えている場合であっても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する。民法714条は、責任無能力者の不法行為により被害者が救済されないことを防ぐための規定であり、責任能力がある場合に監督義務者の独自の過失を問うことを妨げるものではない。
重要事実
未成年者DがEを殺害するという重大な不法行為に及んだ。Dには不法行為上の責任能力が認められたが、Dの両親(上告人ら)について、Dに対する監督義務を怠った過失があるとして、被害者側から損害賠償を請求された。原審は、上告人らの監督義務懈怠とDによる殺害結果との間に相当因果関係を肯定し、民法709条に基づく不法行為の成立を認めた。
あてはめ
未成年者Dに責任能力があるため、民法714条による監督義務者の責任は発生しない。しかし、本件では上告人らのDに対する具体的な監督義務の懈怠が認定されており、その義務違反とDによる殺害という重大な結果との間に相当因果関係が認められる。このように、親の監督上の過失と子の不法行為結果との間に因果関係が認められる特段の事情がある場合には、民法709条の要件を満たすといえる。
結論
監督義務者は、民法709条に基づき損害賠償責任を負う。本件上告は棄却される。
実務上の射程
子が責任能力を備えている場合、民法714条の法定外免責事由(監督義務を果たしていたことの立証)による構成ではなく、民法709条に基づき被害者側が「監督義務違反」と「因果関係」を立証する必要がある。答案上は、子の責任能力の有無を確認した上で、責任能力がある場合には709条の枠組みを用いて、親の具体的予見可能性や結果回避義務違反を論じる必要がある。
事件番号: 昭和40(オ)1056 / 裁判年月日: 昭和42年6月27日 / 結論: 棄却
一 被害者本人が幼児である場合における民法第七二二条第二項にいう被害者の過失には、被害者側の過失をも包含するが、右にいわゆる被害者側の過失とは、被害者本人である幼児と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられる関係にある者の過失をいうものと解するのが相当である。 二 保育園の保母が当該保育園の被用者として被害者たる幼児…