責任能力がある未成年者の不法行為において、その過失の有無は、成人と同一の注意義務を標準として定めるべきである。
未成年者の不法行為における注意義務の程度
民法709条,民法712条
判旨
未成年者の不法行為であっても、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能(責任能力)を備えている以上、過失の有無は通常の成人と同一の注意義務を標準として判断すべきである。
問題の所在(論点)
民法709条の過失の判断において、責任能力を有する未成年者の具体的年齢や未成熟性を、注意義務の基準を軽減させる事情として考慮すべきか。
規範
不法行為法上の過失とは、結果発生を予見し、回避すべき客観的な注意義務に違反することをいう。未成年者の不法行為について、民法712条所定の責任能力が認められる場合には、その過失の有無は、未成年者であることを特段考慮することなく、通常の成人と同一の注意義務を標準として定めるべきである。
重要事実
上告人(未成年者)は、交通事故を引き起こし、被上告人に対して傷害を負わせた。上告人は、過失の有無を判断するにあたり、自身が未成年者であることを考慮すべきであると主張して、原審の過失認定の違法を訴え上告した。
あてはめ
本件において、上告人は不法行為につき責任能力を有する未成年者である。過失の判断基準は、行為者の主観的な能力ではなく、社会通念上の客観的な注意義務にある。したがって、上告人が未成年者であっても、責任能力がある以上は、通常の成人と同一の注意義務を負う。原判決が上告人の過失を論ずる際に未成年であることを考慮しなかったことは、客観的注意義務の法理に照らして正当である。
結論
責任能力がある未成年者の過失を判断する際、未成年であることを理由に注意義務を軽減することはできない。上告棄却。
実務上の射程
責任能力(12歳前後が目安)を前提とする限り、未成年者の過失認定において「年齢」は考慮要素とならないことを明示した判例である。被害者保護の観点から、過失の客観化を徹底する趣旨と解される。答案上は、民法709条の過失の意義を述べる際、行為者の属性による基準の個別化を否定する論拠として活用できる。なお、過失相殺(722条2項)における「事理弁識能力」の議論とは別次元の問題であることに注意を要する。
事件番号: 平成17(受)882 / 裁判年月日: 平成18年2月24日 / 結論: 棄却
少年院を仮退院した後に保護観察の遵守事項を守らないで遊び歩くなどしていた未成年者が強盗傷人事件を犯した場合において,当該未成年者が間もなく成人に達する年齢にあることなどから,親権者が当該未成年者に及ぼし得る影響力は限定的なものとなっており,当該親権者が上記遵守事項を確実に守らせることのできる適切な手段を有していたとはい…