少年院を仮退院した後に保護観察の遵守事項を守らないで遊び歩くなどしていた未成年者が強盗傷人事件を犯した場合において,当該未成年者が間もなく成人に達する年齢にあることなどから,親権者が当該未成年者に及ぼし得る影響力は限定的なものとなっており,当該親権者が上記遵守事項を確実に守らせることのできる適切な手段を有していたとはいい難いこと,当該親権者において当該未成年者が上記事件のような犯罪を犯すことを予測し得る事情があったとはいえないこと,当該未成年者の生活状態が直ちに少年院に再入院させるための手続等を執るべき状態にあったともいえないことなど判示の事情の下では,当該親権者に上記事件に結びつく監督義務違反があったとはいえない。
未成年者が強盗傷人事件を犯した場合において親権者に同事件に結びつく監督義務違反があったとはいえないとされた事例
民法709条
判旨
責任能力ある未成年者の親権者は、監督義務違反と損害との間に相当因果関係が認められる場合に限り、民法709条に基づく責任を負うが、本件のように未成年者が成人間近で親の限定的な影響力しか及ばず、具体的な犯行の予測も困難な状況では、監督義務違反は認められない。
問題の所在(論点)
責任能力ある未成年者が不法行為を行った場合において、親権者に民法709条に基づく独自の不法行為責任(監督義務違反)が認められるか、その判断基準と成人間近の少年に対する監督義務の範囲が問題となる。
規範
未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者に監督義務違反があり、これと未成年者の不法行為によって生じた損害との間に相当因果関係を認め得るときには、監督義務者は民法709条に基づき損害賠償責任を負う。その判断にあたっては、未成年者の年齢、生活実態、親の及ぼし得る影響力の程度、および具体的な非行や犯行の予測可能性を総合的に考慮する。
重要事実
少年院を仮退院し保護観察中であった甲・乙・丙(当時19歳)が、共同して上告人に対し強盗傷害事件を起こした。上告人は、親権者である被上告人らが、保護観察の遵守事項を守らせる義務や、守られない場合に少年院へ再入院させる手続を執るべき義務を怠ったと主張。甲らは非行歴があったが、仮退院後は就労や資格取得の動きを見せ、事件直前まで特段の非行事実はなかった。また、丙の暴力団事務所への出入りを親は知らなかった。
あてはめ
本件当時、甲らは成人間近で職歴もあり、親の手元を離れて生活するなど親の影響力は限定的であった。親が遵守事項を確実に守らせる適切な手段を有していたとは言い難い。また、仮退院後の甲らに特段の非行事実はなく、親が強盗傷害という具体的な犯罪を予測し得る事情もなかった。丙の暴力団関与も親は不知であり、直ちに再入院手続を執るべき生活状態にあったともいえない。したがって、本件事件に結びつくような監督義務違反は認められない。
結論
被上告人らに民法709条に基づく損害賠償責任を認めることはできない(請求棄却)。
実務上の射程
責任能力ある未成年者の事案において、民法714条ではなく709条を根拠とすることを明示した。特に「成人間近(19歳)」かつ「少年院仮退院後」という事実関係下では、具体的な犯行の予測可能性や、親の現実的な影響力の限界が、過失(義務違反)の有無を分ける重要な考慮要素となる。
事件番号: 昭和47(オ)1067 / 裁判年月日: 昭和49年3月22日 / 結論: 棄却
未成年者が責任能力を有する場合であつても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によつて生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき民法七〇九条に基づく不法行為が成立する。