航路が定められている港の防波堤の入口又は入口附近において航路を航行して入航しようとする汽船が出航しようとする汽船と出会う虞のある場合は、右出航船が法令の定める航法に違反して航路外を航行した後航路外から航路に入つて出航しようとしているときであつても、右入航船は港則法一五条所定の避航義務を免れない。
航路が定められている港の防波堤の入口又は入口附近において航路を航行して入航しようとする汽船と航路外を航行した後航路外から航路に入つて出航しようとする汽船とが出会う虞のある場合における右入航船の避航義務
港則法12条,港則法14条1項,港則法15条
判旨
港則法所定の航路において入航船が出航船と出会うおそれがある場合、出航船が航法に違反して航路外から入って出航しようとしているときであっても、入航船は同法15条の避航義務を免れない。
問題の所在(論点)
港則法15条が定める「入航船の避航義務」は、対向する出航船が航法違反の態様で航路に進入してきている場合であっても、なお維持されるか。
規範
港則法15条は、港の防波堤の入口付近等で入航船と出航船が向かい合う際の優先関係を定めた規定であり、航行の安全を確保する趣旨から、相手方の航法違反の有無にかかわらず適用される。したがって、出航船が法令に反して航路外から航路に進入し出航しようとする場合であっても、入航船は同条に基づく避航義務を負う。
重要事実
港則法12条に基づき航路が定められている港の防波堤入口付近において、入航しようとする汽船(上告人)が、出航しようとする他の汽船と出会うおそれが生じた。この際、出航船は法令が定める航法に違反して航路外を航行した後、航路外から航路に入って出航しようとする状態にあった。
あてはめ
本件において、上告人の汽船は入航船の立場にあり、出航船と出会うおそれがあった。出航船が航路外を航行した後に航路へ入るという航法違反を犯していた事実は認められるが、港則法15条の目的は輻輳する港湾入口での衝突防止にある。そのため、相手方の先行する違反行為をもって、直ちに法が課した入航船の避航義務が消滅すると解することはできない。入航船は出航船を避けるべき立場にあると評価される。
結論
出航船に航法違反がある場合であっても、入航船は港則法15条所定の避航義務を免れない。したがって、本件裁決に違法はないとした原審の判断は正当である。
実務上の射程
海難審判や船舶事故に関する行政訴訟において、航法規定の適用に「相手方の適法な航行」が黙示の前提条件となるかを否定した判例である。司法試験においては、行政法や不法行為法における「信頼の原則」の適用範囲や、安全法規の形式的適用の是非を検討する際の参考となる。答案上は、事故回避のための義務が形式的な立場(入航か出航か)によって定まることを強調する際に活用できる。
事件番号: 昭和25(オ)61 / 裁判年月日: 昭和26年7月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】船舶の衝突事故において、船長が自船の航行上の義務を自覚せず、航法の規定に反して漫然と転針を行い衝突を招いた場合、その過失に基づく免状停止処分は適法である。 第1 事案の概要:上告人Aが船長を務めるD丸は、大型連絡船E丸が接近していることを認識していたが、出港船としての自覚を欠き、他船の前面において…