給付訴訟においては、給付義務者であると原告の主張している者に被告適格がある。
給付訴訟における被告適格
民訴法226条
判旨
給付の訴えにおける被告適格は、原告が給付義務者であると主張する者に認められ、実際の義務の有無は本案の当否の問題である。また、第一審が被告適格を欠くとして訴えを却下した場合でも、本案について審理が尽くされていれば、上告審が自ら本案の判断を行い上告を棄却できる。
問題の所在(論点)
給付の訴えにおいて、被告が実体法上の処分権限(給付義務)を有しない場合に、被告適格を欠くとして訴えを却下すべきか、あるいは請求棄却とすべきか。また、原審が誤って却下した場合、上告審が自ら本案の当否を判断して上告を棄却できるか。
規範
給付の訴えにおいては、その訴えを提起する者が給付義務者であると主張している者に被告適格が認められる。当該被告が実体法上の給付義務を負担するかどうかは、被告適格の問題ではなく、本案請求の当否(理由の有無)にかかわる事柄である。
重要事実
上告人(原告)は、被上告人ら(被告)が本件ビルの壁面に設備を設置したとして、所有権に基づきその撤去を求めて提訴した。これに対し原審(二審)は、被上告人らには本件設備を撤去する処分権限がないから被告適格を欠くと判断し、不適法な訴えとして却下した。しかし、原審は却下の判断に至る過程で、被告らが撤去義務(処分権限)を負うか否かについて当事者に主張立証を尽くさせ、実質的な審理を遂げていた。
あてはめ
本件では、上告人が被上告人らを給付義務者と主張して提訴している以上、被上告人らには被告適格が認められる。したがって、被告らに処分権限がないことを理由に訴えを却下した原判決は、当事者適格の法理に照らし違法である。もっとも、原審において処分権限の有無に関する審理が尽くされており、被上告人らに撤去義務がないことが明らかである以上、本来は請求棄却とすべき事案である。不利益変更禁止の原則(民訴法304条、396条)から原判決を請求棄却に変更することは許されないが、結論として訴えを却下した原判決を維持し、上告を棄却しても不当ではない。
結論
給付の訴えにおける被告適格は、原告の主張自体から決せられる。実体法上の義務の有無を理由に被告適格を否定し訴えを却下することは誤りであるが、審理が尽くされている場合には、結論において上告を棄却することができる。
実務上の射程
給付の訴えにおける「主張上の適格」を明確にした重要判例である。答案上は、当事者適格の有無が争点となる場面で、給付の訴えについては「請求権を主張する者に原告適格、義務者として主張された者に被告適格がある」との規範を定式化するために用いる。また、本案審理を尽くした後の却下判決に対する上告審の対応(不利益変更禁止との関係)についても言及可能である。
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