一 自己の持分を登記上侵害されている共同相続人の一人がこれを侵害している他の複数の共同相続人に対して妨害排除としての実質を有する一部抹消(更正)登記手続を請求する訴訟は、右他の共同相続人全員を被告とすべき固有必要的共同訴訟ではない。 二 被相続人の不動産に関する登記義務が共同相続人によつて承継された場合における当該共同相続人の登記義務は、不可分債務である。
一 共有登記の一部抹消(更正)登記請求訴訟と共有名義人全員を被告とすることの要否 二 被相続人の不動産に関する登記義務が共同相続人によつて承継された場合における当該共同相続人の登記義務の性質
民訴法62条,民法430条,民法896条,民法898条,不動産登記法63条
判旨
共同相続人間で真実の相続分と異なる登記が経由された場合、持分を侵害された相続人が特定の侵害相続人に対し一部抹消(更正)登記を求める訴訟は、他の共同相続人全員を被告とする必要はない(固有必要的共同訴訟ではない)。また、被相続人の負っていた登記義務を承継した共同相続人の債務は不可分債務となる。
問題の所在(論点)
1. 共同相続人の一部を被告として更正登記を請求する訴訟が、固有必要的共同訴訟にあたるか。2. 被相続人(本件では死亡した共同相続人D)が負っていた登記義務を承継した複数の相続人の債務の性質。
規範
1. 共同相続人間における相続財産の持分に関する紛争は、侵害された者と侵害している者との間での個別的な解決が可能であるため、妨害排除請求としての更正登記請求訴訟は、他の共同相続人全員を被告とすべき固有必要的共同訴訟ではない。2. 被相続人の不動産に関する登記義務が共同相続人によって承継された場合、各相続人が承継する登記義務は不可分債務(民法428条参照)であると解する。
重要事実
被相続人Eの所有不動産について、自筆証書遺言による指定相続分(被上告人12分の7等)と異なる、法定相続分に近い内容の持分登記(被上告人6分の1等)が経由された。被上告人は、他の共同相続人の一人である上告人に対し、自己の正当な相続分への更正登記手続を求めて提訴した。なお、共同相続人の一人であったDが訴訟前に死亡し、上告人らがDの権利義務を承継していた。
事件番号: 昭和45(オ)398 / 裁判年月日: 昭和46年1月26日 / 結論: 棄却
相続財産中の不動産につき、遺産分割により権利を取得した相続人は、登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、法定相続分をこえる権利の取得を対抗することができない。
あてはめ
1. 被上告人は、登記上自己の持分を侵害している上告人のみを被告として、上告人が侵害している限度で妨害排除としての更正登記を請求できる。全員を被告とする必要はなく、訴えは適法である。2. Dが被上告人に対して負っていた登記更正義務は、Dの死亡により相続人である上告人らに承継された。この登記義務は性質上不可分債務であるため、上告人は自己の侵害分だけでなく、承継したDの義務についても、被上告人の持分を回復させる更正登記手続を行う義務を負う。
結論
本件訴訟は固有必要的共同訴訟ではなく適法である。上告人は、自己の持分が真実より過大となっている部分に加え、承継したDの過大登記部分についても更正登記義務を負う。ただし、他の相続人(F、G)の持分を更正する義務までは負わない。
実務上の射程
登記請求訴訟の被告適格および共同訴訟の性質を判断する際の重要判例である。また、共同相続人による登記義務の承継が「不可分債務」となる点は、債権法上の構成として答案で頻出する論点である。
事件番号: 昭和36(オ)1178 / 裁判年月日: 昭和39年4月17日 / 結論: 破棄自判
一 甲乙丙丁戌五名が共同相続した不動産につき、甲が勝手に単独所有権保存登記をした場合、乙丙丁戌が甲に対し請求できるのは、同人らの持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、右保存登記の全部抹消を求めることは許されない。 二 右所有権保存登記の抹消登記手続を求める申立には、更正登記手続を求める申立をも含むものと解…
事件番号: 昭和48(オ)369 / 裁判年月日: 昭和50年3月6日 / 結論: 棄却
買主に対する土地所有権移転登記手続義務を相続した共同相続人の一部の者が右義務の履行を拒絶しているため、買主が相続人全員による登記手続義務の履行の提供があるまで代金全額について弁済を拒絶する旨の同時履行の抗弁権を行使している場合には、他の相続人は、自己の相続した代金債権を保全するため、右買主が無資力でなくても、これに代位…
事件番号: 昭和39(オ)140 / 裁判年月日: 昭和39年7月16日 / 結論: 棄却
買主が売主の相続人に対し、売買を原因として目的不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、右相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない(昭和三六年一二月一五日、民集一五巻一一号二八六五頁参照)。
事件番号: 昭和33(オ)517 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
不動産の買主が、その売主の相続人に対し、売買を原因として、当該不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。