時価八万円相当のガスライター一個及び二〇万円相当のデパートギフト券を収賄したとの容疑で逮捕された市職員を逮捕後四日目に懲戒免職でなく分限免職にして退職手当を支給した場合において、その後間もなく、右職員が前記物品のほかに三〇〇万円の金員を収賄したとの事実で起訴され、有罪判決が確定したとしても、右退職手当の支給をもつて違法な公金の支出に当たるということはできない。
収賄罪で逮捕された市職員を懲戒免職でなく分限免職にして退職手当を支給したことが地方自治法二四二条一項にいう違法な公金の支出に当たらないとされた事例
地方公務員法28条1項3号,地方自治法242条1項,地方自治法242条の2第1項4号
判旨
財務会計上の行為の前提となる原因行為が違法な場合、当該財務会計上の行為も違法となるが、本件分限免職処分は任命権者の裁量の範囲内であり違法とはいえないため、これに基づく退職手当の支給も適法である。
問題の所在(論点)
1. 財務会計上の行為の原因となる前提行為(分限免職処分)の違法性が、財務会計上の行為(退職手当支給)の違法性を導くか。 2. 懲戒免職処分を行わずに分限免職処分を選択したこと、およびその発令時期の決定が裁量権の逸脱・濫用として違法となるか。
規範
1. 住民訴訟の対象となる財務会計上の行為が違法となるのは、当該行為自体が直接法令に違反する場合だけでなく、その原因となる行為(前提行為)が法令に違反し許されない場合も含まれる。 2. 職員に懲戒事由がある場合に、懲戒処分を行うか否か、またはいかなる処分を選択するかは、任命権者の裁量に委ねられる。また、分限免職処分の発令時期の決定についても、不適格な職員を早期に公務から排除する要請があることから、任命権者の裁量に属する。
重要事実
川崎市の港湾局管理部長Dが収賄容疑で逮捕された。市長Bは、逮捕直後に判明していた収賄事実に基づき、地方公務員法28条1項3号(適格性を欠く場合)に該当するとしてDを分限免職処分とした。その後、Dは退職手当の支給を受けたが、後に他の重大な収賄事実も発覚し、懲役2年の有罪判決が確定した。住民側は、Dを懲戒免職にせず分限免職としたこと、およびその発令時期が不当であり退職手当を支給したことは違法であるとして、住民訴訟を提起した。
あてはめ
1. 本件条例下では、分限免職処分がなされれば当然に退職手当が支給されるため、分限免職処分は退職手当支給の直接の原因であり、前者が違法なら後者も違法となる。 2. 本件処分時、Dにはガスライター等の収賄事実があり「適格性を欠く」要件を具備していた。当時判明していた事実のみに照らせば、懲戒免職を選択しなかったことが直ちに裁量の逸脱とはいえない。 3. 発令時期についても、不確実な事態の進展を予測することには限界があり、早期に公務の適正化を図る必要性があった以上、裁量の範囲内である。 4. 処分後に別件の収賄事実が判明したとしても、既に身分を失っている以上、処分を取り消さなかったことが違法とはいえない。
結論
本件分限免職処分およびこれを取り消さなかったことに違法性は認められないため、その原因行為に基づく本件退職手当の支給も適法である。
実務上の射程
住民訴訟における「財務会計上の行為の違法性」を論じる際、前提となる行政処分(原因行為)にまで遡って主張できることを示す重要な射程を持つ。また、懲戒処分と分限処分の選択が任命権者の広い裁量に属することを確認しており、裁量権の審査密度を検討する際の指標となる。
事件番号: 平成11(行ヒ)114 / 裁判年月日: 平成16年3月2日 / 結論: 破棄自判
1 市が,職務専念義務の免除をするとともに勤務しないことの承認をして,地元の商工会議所に市職員を派遣し,その給与を支出した場合において,市と商工会議所との間に派遣職員の職務内容について具体的な取決めはなく,派遣職員は市の企画する商工業振興策と直接的な関連性が認められる諸事業には具体的に関与しておらず,派遣職員の職務の中…