本件「伐採搬出期間内に伐採搬出が終わらないときは売買契約は自動的に解除となり生立する立木および伐採木は売主の所有に帰属する」との約定は、残存立木および伐採木が売主の所有となる旨を定めたにとどまり、全く伐採がなされなかつた場合でも、契約を遡及的に消滅させる趣旨ではないと解すべきである。
立木の伐採搬出期間経過後は立木売買契約は解除となり残存立木は売主の所有に帰する旨の約定の趣旨
民法545条,民法555条
判旨
立木売買契約における伐採搬出期間経過による自動解除の約定は、原則として既往に遡って契約を消滅させるものではなく、将来に向かって買主の権利を失わせ、残存物の所有権を売主に帰属させる趣旨と解される。
問題の所在(論点)
「自動的に解除」とする失権条項が、民法545条1項の原則通り契約を遡及的に消滅させ原状回復義務を生じさせる趣旨か、それとも将来に向かってのみ失効させる趣旨か、その解釈が問題となった。
規範
契約の解除条項の解釈にあたっては、文言のみならず、当該約定が置かれた目的や取引上の合理性、当事者の合理的意思を考慮すべきである。特に継続的・段階的な履行が想定される契約においては、既に履行された部分の効力を維持しつつ、将来に向かってのみ効力を失わせる趣旨(将来効)と解すべき場合がある。
重要事実
上告人は被上告人との間で立木売買契約を締結した。同契約には「伐採搬出期間内に伐採搬出を終わらないときは、売買契約は通知催告なくして自動的に解除となり、生立する立木及び伐採木は売主の所有に帰属する」旨の失権条項が付されていた。上告人が期間内に伐採・搬出を完了できなかったため、被上告人が残存立木の所有権を主張したところ、上告人は契約が遡及的に消滅し原状回復義務が生じる(代金の返還等)と主張して争った。
事件番号: 昭和37(オ)537 / 裁判年月日: 昭和40年12月21日 / 結論: 棄却
債権者が譲渡担保ならびに代物弁済契約に基づいて債務者から立木の所有権を取得したことを理由に右立木につき伐採搬出を許す旨の仮処分命令を得て、これを伐採搬出したが、右契約が臨時物資需給調整法に基づく木炭需給調整規則(昭和二四年農林省令第七四号)に違反する木炭出荷義務を担保するためになされたために無効であり、したがつて、債権…
あてはめ
本件約定は、残存立木の所有権帰属を定めつつ、既に支払われた代金の返還等の処置については一切触れていない。また、立木の売主にとって、買主の懈怠により契約が遡及的に消滅し代金返還義務を負うことは、予測に反し不合理である。他方、買主は期間内に自由に伐採搬出する機会を与えられていた以上、期間経過による権利喪失を認めても信義則や公平の原則に反しない。したがって、本件約定は将来に向かって買主の権利を失わせる趣旨と解される。
結論
本件約定は契約を遡及的に消滅させるものではないため、売主は既受領の代金を返還する義務を負わず、残存立木の所有権は売主に帰属する。
実務上の射程
契約書の「解除」という文言に拘泥せず、清算事務の困難性や当事者の合理的意思から将来効を認めた事例である。実務上、立木売買や継続的取引における失権条項の解釈において、遡及効を否定する有力な根拠として活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)536 / 裁判年月日: 昭和40年12月21日 / 結論: 棄却
臨時物資需給調整法に基づく木炭需給調整規則(昭和二四年農林省令第七四号)施行当時、木炭の生産者が同規則第二条、第一四条に違反して集荷業者でない者との間に締結した木炭譲渡契約は、私法上その効力を有しないものと解すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)538 / 裁判年月日: 昭和29年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法行為等に基づく損害賠償請求において、過失相殺(民法722条2項)の主張は事実審において主張されない限り、上告審でこれを採用することはできない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、被上告人(原告)の損害が被上告人の過失に基づくと主張し、民法722条2項の適用があるべきだと上告理由で述べた。しか…
事件番号: 昭和40(オ)1060 / 裁判年月日: 昭和42年6月22日 / 結論: 棄却
山林の売買予約の成立を否定した二審の判断について審理不尽、理由不備を理由として差した場合において、差戻後の二審判決が、たまたま差戻前の判決の結論と一致していたとしても、その前提となる間接事実が異なる以上、民訴法第四〇七条第二項に違反しないというべきである。