臨時物資需給調整法に基づく木炭需給調整規則(昭和二四年農林省令第七四号)施行当時、木炭の生産者が同規則第二条、第一四条に違反して集荷業者でない者との間に締結した木炭譲渡契約は、私法上その効力を有しないものと解すべきである。
物資需給調整規則違反の行為が無効とされた事例。
民法90条,臨時物資需給調整法1条,木炭需給調整規則(昭和24年農林省令74号)2条,木炭需給調整規則(昭和24年農林省令74号)14条
判旨
経済統制を目的とする法令に違反する契約は、当該法令が強行法規である場合、私法上も無効となる。また、その無効な義務の履行を担保するために締結された譲渡担保や代物弁済契約も、主たる契約の無効に伴い当然に無効となる。
問題の所在(論点)
臨時物資需給調整法および木炭需給調整規則に違反する木炭出荷契約の私法上の効力、および、主たる債務を定める契約が無効である場合に、その担保としてなされた譲渡担保および代物弁済契約の効力が認められるか。
規範
産業の回復および振興に関する基本的な政策および計画の実施を確保するために制定された経済統制法令(臨時物資需給調整法等)は、私法上の効力を制限する強行法規と解される。したがって、これに違反する行為は私法上もその効力を有しない。また、主たる義務を定めた契約が強行法規違反により無効である場合、その義務の履行を担保するための付随的契約(譲渡担保・代物弁済予約等)もその効力を有しない。
重要事実
木炭集荷業者でない亡D(上告人先代)が、被上告会社との間で、貸金の弁済として木炭を出荷させる契約(本件木炭出荷契約)を締結した。その際、当該出荷義務の担保として立木を譲渡担保に供し、義務不履行時には立木の所有権をDが取得する代物弁済の予約もなされた。当時の木炭需給調整規則(臨時物資需給調整法に基づく省令)は、木炭生産者は集荷業者以外に木炭を譲渡することを禁じていた。
事件番号: 昭和37(オ)537 / 裁判年月日: 昭和40年12月21日 / 結論: 棄却
債権者が譲渡担保ならびに代物弁済契約に基づいて債務者から立木の所有権を取得したことを理由に右立木につき伐採搬出を許す旨の仮処分命令を得て、これを伐採搬出したが、右契約が臨時物資需給調整法に基づく木炭需給調整規則(昭和二四年農林省令第七四号)に違反する木炭出荷義務を担保するためになされたために無効であり、したがつて、債権…
あてはめ
まず、本件規則は物資不足時の需給調整という高度の公共的目的を有し、無資格者への譲渡を厳格に禁止しているため強行法規に当たる。よって、無資格者であるDとの出荷契約は無効である。次に、本件の譲渡担保および代物弁済契約は、あくまで本件木炭出荷義務の履行を担保するために付随してなされたものである。主たる出荷義務自体が強行法規違反により無効である以上、これに付随する担保的契約のみを有効とする余地はなく、これらも一連の無効な取引として効力を否定される。
結論
本件木炭出荷契約は強行法規違反により私法上無効であり、その履行を担保するための立木譲渡契約および代物弁済契約もすべて無効である。
実務上の射程
公序良俗(民法90条)や強行法規違反による契約の無効を論じる際のリーディングケースである。特に、主たる契約が無効となった場合に、その契約から生じる債務を担保する契約も当然に無効となるという「付随的契約の運命」を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和45(オ)998 / 裁判年月日: 昭和47年12月22日 / 結論: 棄却
本件「伐採搬出期間内に伐採搬出が終わらないときは売買契約は自動的に解除となり生立する立木および伐採木は売主の所有に帰属する」との約定は、残存立木および伐採木が売主の所有となる旨を定めたにとどまり、全く伐採がなされなかつた場合でも、契約を遡及的に消滅させる趣旨ではないと解すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)538 / 裁判年月日: 昭和29年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法行為等に基づく損害賠償請求において、過失相殺(民法722条2項)の主張は事実審において主張されない限り、上告審でこれを採用することはできない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は、被上告人(原告)の損害が被上告人の過失に基づくと主張し、民法722条2項の適用があるべきだと上告理由で述べた。しか…