名古屋市議会の議員の定数及び各選挙区において選挙すべき議員の数に関する条例(昭和四二年名古屋市条例第四号)の議員定数配分規定は、平成七年四月九日施行の名古屋市議会議員一般選挙当時、公職選挙法一五条八項に違反していたものとはいえない。
名古屋市議会の議員の定数及び各選挙区において選挙すべき議員の数に関する条例(昭和四二年名古屋市条例第四号)の議員定数配分規定の適法性
名古屋市議会の議員の定数及び各選挙区において選挙すべき議員の数に関する条例(昭和42年名古屋市条例第4号)2条,公職選挙法15条8項
判旨
指定都市議会議員選挙の定数配分において、投票価値の不平等が、地域間の均衡等を図るため通常考慮し得る諸般の要素を斟酌してもなお一般的に合理性を有しない程度に達しているときは、議会の裁量の限界を超え公職選挙法15条8項に違反する。
問題の所在(論点)
指定都市である名古屋市の議会議員選挙における選挙区間の定数配分規定が、投票価値の平等を求める憲法上の要請を受けた公職選挙法15条8項に違反し、違法となるか。
規範
憲法の定める選挙権の平等の原則は、地方議会選挙においても投票価値の平等を要求する。これを受けた公選法15条8項は、人口比例を最も重要かつ基本的な基準としているが、指定都市においては区を選挙区とする等の制度上の制約があるため、議会に一定の合理的裁量を認めている。したがって、定数配分規定が同項に適合するかは、議会の裁量権の合理的な行使として是認されるかにより決すべきである。具体的には、投票価値の不平等が、地域間の均衡を図るなどのため通常考慮し得る諸般の要素を斟酌してもなお、一般的に合理性を有するものとは考えられない程度に達しているときは、合理的裁量の限界を超えたものと推定され、正当化すべき特別の理由がない限り違法となる。
重要事実
平成7年施行の名古屋市議会議員選挙において、条例で定められた議員定数(78人)に基づく選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は1対1.73であった。また、人口の少ない選挙区の定数が人口の多い選挙区を上回る「逆転現象」が14通り(うち2人以上の差がある顕著なものは4通り)存在していた。もっとも、いずれの選挙区も配当基数が「1」を超えており、人口比例原則(最大剰余法)のみによった場合でも1対1.43の較差が生じる状況にあった。
あてはめ
本件の最大較差1.73は、人口比例原則のみによった場合の1.43を上回る。また、逆転現象が少なからず存在し、人口比例原則に反する点があることは否定できない。しかし、公選法が定める指定都市の選挙制度(区を単位とする選挙区設定等)の下では、1.73という較差は、諸般の要素を斟酌してもなお一般的に合理性を有しない程度に達しているとまではいえない。逆転現象等の不平等についても、直ちに議会の裁量権の合理的行使の限界を超えるものと断ずることはできない。
結論
本件条例の定数配分規定は、公職選挙法15条8項に違反するものではなく、適法である。
実務上の射程
地方議会議員の定数配分に関する「裁量権の逸脱・濫用」を審査する枠組みを示しており、衆議院等の国政選挙における「投票価値の平等」の法理とは、地方自治の特殊性や制度上の制約の観点から区別して論じる必要がある。特に「指定都市」特有の区割り制限を考慮した裁量判断の基準として重要である。
事件番号: 昭和56(行ツ)58 / 裁判年月日: 昭和58年11月7日 / 結論: 棄却
公職選挙法一三条、同法別表第一及び同法附則七項ないし九項による選挙区及び議員数の定めは、昭和五五年六月二二日の衆議院議員選挙当時、憲法一四条一項、一五条一項、三項、四四条但し書に違反していたものと断定することはできない。 (意見及び反対意見がある。)