同一の申立てに係る複数の不動産の競売で不動産が順次売却されて配当手続が数次に及び,先行する配当手続で国税徴収法26条の規定による調整が行われた場合において,私債権に優先するものとして国税及び地方税等に充てるべき金額の総額を決定するために用いられながら配当を受けることができなかった国税,地方税等は,後行の配当手続においても私債権に優先するものとして取り扱うことができる。
同一の申立てに係る複数の不動産の競売における先行する配当手続で国税徴収法26条の規定による調整が行われた場合において配当を受けることができなかった国税,地方税等を後行の配当手続で私債権に優先するものとして取り扱うことの可否
民事執行法84条,民事執行法85条,国税徴収法8条,国税徴収法16条,国税徴収法26条
判旨
数次の配当手続において、先行手続で国税徴収法26条の調整に用いられつつ現実の配当を受けられなかった公課は、後行手続でも再び私債権に優先する。租税の一般的優先原則(国税徴収法8条)は別段の規定がない限り適用され、同法26条の適用がこの優先性を制限するものではない。
問題の所在(論点)
同一の競売事件で配当が数次に及ぶ場合、先行する配当手続で国税徴収法26条の調整に用いられた(私債権に優先する枠を確保した)公課を、後行の手続で再び私債権に優先させることは許されるか。
規範
国税及び国税徴収の例による公課は、別段の規定がない限り、すべての債権に優先する(一般的優先の原則:国税徴収法8条)。国税徴収法16条等は担保権付債権との調整を定めているが、同法26条を適用したことにより、ある公課が再度私債権に優先する結果になることを制限する規定は存在しない。したがって、先行する配当手続で調整(26条2号)に用いられながら、公課相互間の劣後(同条3号)により配当を得られなかった公課は、後行の配当手続においても再び私債権に優先するものとして取り扱われる。
重要事実
根抵当権者である被上告人は、債務者の不動産について競売を申し立てた。上告人(社会保険事務所及び労働基準局)は、根抵当権設定登記より法定納期限が早い公課(公課A)と遅い公課(公課B)につき交付要求をした。第1回配当では、公課Aの額を「公課に充てるべき総額」として確保しつつ(26条2号)、公課相互間の優先順位(3号)に従い、一部の公課のみが配当された。第2回配当において、再度公課Aを基準にして算出された額が、第1回で配当を受けられなかった公課に配当されたため、被上告人が配当異議を申し立てた。
あてはめ
本件における労働基準局の公課(109万3673円)は、法定納期限が根抵当権設定登記より先行しているため、国税徴収法26条2号により「公課に充てるべき金額の総額」を決定する基準となる。第1回配当でこの公課が現実の配当を受けられなかったとしても、租税の一般的優先の原則を制限する特段の規定はない。ゆえに、第2回配当においても、当該公課の優先額相当分を「公課に充てるべき総額」とし、これを交付要求の先着手等で優先する他の公課(社会保険事務所分)に充てることは、適法な配当手続といえる。
結論
後行の配当手続においても、当該公課は再び私債権に優先するものとして取り扱われる。したがって、社会保険事務所への配当を認めた配当表は正当であり、被上告人の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
数個の不動産が順次売却されるケースでの国税徴収法26条(三者間の優先順位調整)の解釈を示す。担保権者の予測可能性よりも租税の一般的優先原則を重視する判断であり、答案上は、明文の制限がない限り租税優先が維持されるという論理で使用する。
事件番号: 昭和49(オ)824 / 裁判年月日: 昭和49年12月20日 / 結論: 棄却
不動産競売手続において再競売が実施された場合には、再競売の競落期日の終りに至るまで配当要求をすることができる。