自己の所有するトラックを持ち込んで特定の会社の製品の運送業務に従事していた運転手が、自己の危険と計算の下に右業務に従事していた上、右会社は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、右運転手の業務の遂行に関し特段の指揮監督を行っておらず、時間的、場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであったなど判示の事実関係の下においては、右運転手が、専属的に右会社の製品の運送業務に携わっており、同社の運送係の指示を拒否することはできず、毎日の始業時刻及び終業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定され、その報酬は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも一割五分低い額とされていたなどの事情を考慮しても、右運転手は、労働基準法及び労働者災害補償保険法上の労働者に当たらない。
車の持込み運転手が労働基準法及び労働者災害補償保険法上の労働者に当たらないとされた事例
労働基準法9条,労働者災害補償保険法7条
判旨
自己所有のトラックを持ち込み運送業務に従事する者が、業務遂行上の特段の指揮監督を受けず、時間的・場所的拘束も緩やかであり、自己の危険と計算の下に労務を提供している場合、労働基準法上の労働者には該当しない。
問題の所在(論点)
自己の所有する車両を持ち込んで運送業務に従事する、いわゆる「持ち込み運転手」が、労働基準法9条、および労働者災害補償保険法上の「労働者」に該当するか。
規範
労働基準法上の「労働者」(9条)とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用され、賃金を支払われる者をいう。その判断は、実態に即し、①使用者の指揮監督の下に労務を提供しているか(指揮監督下の労働)、②その対価として報酬が支払われているか(報酬の労務対照性)という「使用従属性」の有無を軸に、諸要因を総合考慮して決すべきである。
重要事実
事件番号: 平成17(行ヒ)145 / 裁判年月日: 平成19年6月28日 / 結論: 棄却
作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事する形態で稼働していた大工が,特定の会社が請け負っていたマンションの内装工事に従事していた場合において,(1)上記大工は,自分の判断で上記工事に関する具体的な工法や作業手順を選択することができたこと,(2)上記大工は,事前に同社の現場監督に連絡すれば,工期に遅れない限り,仕事…
上告人は、自己所有のトラックをD社に持ち込み、製品の運送に従事していた。D社からの指示は運送物品・先・時刻に限られ、経路や運転方法は上告人に委ねられていた。勤務時間は不定で、当日の業務終了後は翌日の準備をして帰宅でき、出社せず直接目的地へ向かうこともあった。報酬は出来高払いで、ガソリン代や高速代等はすべて上告人負担であった。また、所得税の源泉徴収はなく、社会保険の適用も受けていなかった。
あてはめ
まず、指示が運送の性質上必要な範囲に留まり、経路等の細部には及ばないことから、業務遂行上の特段の指揮監督はない。次に、始業・終業時刻が厳格に定められず、一日の業務終了後の拘束もないため、時間的・場所的拘束は極めて緩やかである。さらに、車両の購入・維持費を自己負担している点は、自己の危険と計算の下に事業を行う事業者性を強く示すものである。報酬支払態様(源泉徴収なし等)も労働者性を否定する。専属制や指示拒否権の欠如という事実を考慮しても、上記事情を覆すには足りない。
結論
上告人はD社の指揮監督の下で労務を提供していたとは評価できず、労働基準法および労働者災害補償保険法上の労働者には該当しない。
実務上の射程
本判決(横浜ゴム事件等の流れを汲む「旭紙業事件」)は、個人事業主か労働者かが争われる事案でのリーディングケースである。特に「車両持ち込み」という道具の自前調達(事業者性)と、具体的な指揮監督の欠如が否定の決定打となる。答案では、指揮監督の有無、時間・場所的拘束、事業者性の各要素を事実から抽出し、総合考慮の過程を明示するために活用する。
事件番号: 平成5(行ツ)17 / 裁判年月日: 平成7年2月28日 / 結論: その他
事業主が雇用主との間の請負契約により派遣を受けている労働者をその業務に従事させている場合において、労働者が従事すべき業務の全般につき、作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで事業主が自ら決定し、労働者が事業主の作業秩序に組み込まれて事業主の従業員と共に作業に従事し、その作業の進行がすべて事業主の指揮監…
事件番号: 令和5(行ヒ)108 / 裁判年月日: 令和6年7月4日 / 結論: 破棄自判
労働保険の保険料の徴収等に関する法律(令和2年法律第14号による改正前のもの)12条3項所定の事業の事業主は、当該事業についてされた同項所定の労働者災害補償保険法(令和2年法律第14号による改正前のもの)の規定による業務災害に関する保険給付の支給決定の取消訴訟の原告適格を有しない。
事件番号: 平成5(行ツ)85 / 裁判年月日: 平成9年11月28日 / 結論: 破棄差戻
市立保育園の保母が、勤務開始後三年目には肩や背中の痛みを、その約一年半後には慢性的肩凝りや右腕等の筋肉の痛みを感ずるようになり、その状態のまま新設保育園に主任保母として着任し、保育開始準備等に集中的に当たった後一、二歳児六名を一人で担当するようになり、その年の夏季合同保育期間中に調理を担当した際右背中に激痛を感じ、その…
事件番号: 平成21(行ヒ)473 / 裁判年月日: 平成23年4月12日 / 結論: 破棄自判
住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事する受託者は,次の(1)〜(5)など判示の事実関係の下では,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たる。 (1) 上記会社が行う住宅設備機器の修理補修等の業務の大部分は,能力,実績,経験等を基準に級を毎年定める制度等の下で…