作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事する形態で稼働していた大工が,特定の会社が請け負っていたマンションの内装工事に従事していた場合において,(1)上記大工は,自分の判断で上記工事に関する具体的な工法や作業手順を選択することができたこと,(2)上記大工は,事前に同社の現場監督に連絡すれば,工期に遅れない限り,仕事を休んだり,所定の時刻より後に作業を開始したり所定の時刻前に作業を切り上げたりすることも自由であったこと,(3)上記大工は,他の工務店等の仕事をすることを同社から禁じられていなかったこと,(4)上記大工と同社との報酬の取決めは,完全な出来高払の方式が中心とされていたこと,(5)上記大工は,一般的に必要な大工道具一式を自ら所有し現場に持ち込んで使用していたことなど判示の事実関係の下では,上記大工は,労働基準法及び労働者災害補償保険法上の労働者に当たらない。
作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事する形態で稼働していた大工が労働基準法及び労働者災害補償保険法上の労働者に当たらないとされた事例
労働基準法(平成10年法律第112号による改正前のもの)9条,労働者災害補償保険法(平成12年法律第124号による改正前のもの)7条1項
判旨
一人親方として稼働する大工について、作業の具体的手順の裁量、報酬の出来高払的性格、道具の自前調達、専属性の欠如といった実態を考慮し、労働基準法及び労災保険法上の労働者性を否定した。
問題の所在(論点)
特定の事業主の現場で作業に従事する一人親方の大工について、労働基準法9条及び労働者災害補償保険法上の「労働者」に該当するか(使用従属関係の有無)。
規範
労働基準法上の「労働者」とは、事業に使用され、賃金を支払われる者をいう。その判断は、契約の形式にかかわらず、実態に即して、①指揮監督下の労働(仕事の依頼等に対する諾否の自由の有無、業務遂行上の指示の有無、拘束性の有無、代替性の有無)および②報酬の労務対価性という「使用従属関係」の有無を軸に行う。また、補充的要素として、機械・器具の負担関係、専属性の程度、徴収所得税の態様等を勘案する。
事件番号: 平成7(行ツ)65 / 裁判年月日: 平成8年11月28日 / 結論: 棄却
自己の所有するトラックを持ち込んで特定の会社の製品の運送業務に従事していた運転手が、自己の危険と計算の下に右業務に従事していた上、右会社は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、右運転手の業務の遂行に関し特段の指揮監督を行っておらず、時間的、場所的な拘束の程度も、…
重要事実
大工であるXは、B工務店からマンション内装工事に従事。Bから寸法等の指示は受けるが、具体的工法や手順はXの判断に委ねられていた。工期を守れば欠勤や早退は自由で、他社の仕事も禁止されていなかった。報酬は出来高払が中心で、Bの従業員の給与より高額。Xは自前の大工道具一式を持ち込み、Bの就業規則や社会保険の適用はなく、報酬から所得税の源泉徴収もされていなかった。
あてはめ
Xは工法や手順を自ら選択でき、時間的拘束も緩やかで、Bの具体的指揮監督下にあるとはいえない。報酬は仕事の完成に対して支払われるもので、純粋な労務提供の対価とは認めがたい。さらに、高価な道具を自前で用意していることや、Bへの専属性が事実上のものに過ぎないこと、所得税等の取扱いが個人事業主と同様であることも、労働者性を否定する方向に働く。
結論
XはBの指揮監督下に労務を提供していたとは評価できず、労働基準法および労災保険法上の労働者には該当しない。
実務上の射程
建設業等のいわゆる「一人親方」の労働者性が争われる事案におけるリーディングケース。現場での作業上の制約(寸法等の指示)が、単なる注文内容の指定に過ぎないか、指揮監督にあたるかを区別する際の指針となる。
事件番号: 平成22(行ヒ)273 / 裁判年月日: 平成24年2月24日 / 結論: 棄却
建設の事業を行う事業主が,その使用する労働者を個々の建設等の現場における事業にのみ従事させ,本店等の事務所を拠点とする営業等の事業に従事させていないときは,上記営業等の事業について,当該事業主が労働者災害補償保険法(平成12年法律第124号による改正前のもの)28条1項に基づく特別加入の承認を受けることはできず,上記営…
事件番号: 平成21(行ヒ)473 / 裁判年月日: 平成23年4月12日 / 結論: 破棄自判
住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事する受託者は,次の(1)〜(5)など判示の事実関係の下では,上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たる。 (1) 上記会社が行う住宅設備機器の修理補修等の業務の大部分は,能力,実績,経験等を基準に級を毎年定める制度等の下で…
事件番号: 平成7(行ツ)24 / 裁判年月日: 平成9年1月23日 / 結論: 棄却
土木工事及び重機の賃貸を業として行っていた事業主が、労働者災害補償保険法二八条に基づく特別加入の承認を受けていたとしても、その使用する労働者を右事業主が請け負った土木工事にのみ従事させており、重機の賃貸については労働者を使用していなかったときは、右重機の賃貸業務に起因する死亡に関し、同法に基づく保険給付を受けることはで…
事件番号: 平成5(行ツ)17 / 裁判年月日: 平成7年2月28日 / 結論: その他
事業主が雇用主との間の請負契約により派遣を受けている労働者をその業務に従事させている場合において、労働者が従事すべき業務の全般につき、作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで事業主が自ら決定し、労働者が事業主の作業秩序に組み込まれて事業主の従業員と共に作業に従事し、その作業の進行がすべて事業主の指揮監…