土木工事及び重機の賃貸を業として行っていた事業主が、労働者災害補償保険法二八条に基づく特別加入の承認を受けていたとしても、その使用する労働者を右事業主が請け負った土木工事にのみ従事させており、重機の賃貸については労働者を使用していなかったときは、右重機の賃貸業務に起因する死亡に関し、同法に基づく保険給付を受けることはできない。
複数の事業を行っていた事業主が労働者災害補償保険法二八条に基づく特別加入の承認を受けていたとしても右事業のうちのある業務に起因する死亡に関して同法に基づく保険給付を受けることはできないとされた事例
労働者災害補償保険法27条,労働者災害補償保険法28条
判旨
中小事業主等の特別加入制度は、労働者に関し成立している保険関係を前提に事業主を労働者とみなす制度であるから、労働者を使用せず保険関係が成立していない業務に起因する災害については、保険給付の対象とならない。
問題の所在(論点)
労働者を使用する事業(土木工事)と労働者を使用しない事業(重機賃貸)を併行して行う事業主が、労働者を使用しない側の業務に起因して被災した場合、労災保険法に基づく保険給付の対象となるか。特別加入制度における「保険関係」の及ぶ範囲が問題となる。
規範
労働者災害補償保険法上の特別加入制度(同法27条1号等)は、既に労働者に関し成立している労働保険の保険関係を前提として、その保険関係上、事業主を労働者とみなすことにより同法の適用を可能とするものである。したがって、特別加入の承認による保険効力の範囲は、労働者に関して保険関係が成立している事業の範囲に限定される。
重要事実
Dは土木工事及び重機の賃貸を業としていたが、労働者を使用していたのは請け負った土木工事のみであり、重機の賃貸については労働者を使用することなく、土木工事とは無関係に独立して行っていた。Dは特別加入の承認を受けていたが、重機の賃貸業務に起因して死亡したため、遺族が遺族補償給付等を請求した。
事件番号: 平成22(行ヒ)273 / 裁判年月日: 平成24年2月24日 / 結論: 棄却
建設の事業を行う事業主が,その使用する労働者を個々の建設等の現場における事業にのみ従事させ,本店等の事務所を拠点とする営業等の事業に従事させていないときは,上記営業等の事業について,当該事業主が労働者災害補償保険法(平成12年法律第124号による改正前のもの)28条1項に基づく特別加入の承認を受けることはできず,上記営…
あてはめ
Dの特別加入申請が承認されたことで保険関係が成立したのは、労働者を使用していた「建設事業(土木工事)」に限られる。一方で、重機の賃貸業務は労働者を使用せずに行われており、当該業務については労働者に関する保険関係がそもそも成立していない。そのため、重機賃貸業務は特別加入によって労働者とみなされる前提を欠いており、同業務に起因する死亡は保険関係の範囲外の出来事であると評価される。
結論
Dは重機の賃貸業務に起因する死亡に関し、労災保険法に基づく保険給付を受けることができる者にはあたらない。したがって、遺族の請求を棄却した原審の判断は妥当である。
実務上の射程
複数の事業を営む事業主が特別加入する場合、労働者を使用している特定の事業の範囲内でしか保護されないことを示した事例である。答案作成上は、特別加入者の業務災害認定において、当該業務が「労働者に関する保険関係が成立している事業」に属するかという、保護の前提条件を検討する際の根拠となる。
事件番号: 平成26(行ヒ)494 / 裁判年月日: 平成28年7月8日 / 結論: 破棄自判
労働者が,業務を一時中断して事業場外で行われた研修生の歓送迎会に途中から参加した後,当該業務を再開するため自動車を運転して事業場に戻る際に,研修生をその住居まで送る途上で発生した交通事故により死亡したことは,次の⑴~⑶など判示の事情の下においては,労働者災害補償保険法1条,12条の8第2項の業務上の事由による災害に当た…
事件番号: 昭和54(行ツ)24 / 裁判年月日: 昭和54年12月7日 / 結論: 棄却
山間僻地の発電所に勤務し右発電所と私宅間を社有車(日曜日等は社有車及びバス)を利用して通勤している者が、バスに乗り遅れ自己所有の原動機付自転車により出勤する途中受けた災害は、右の通勤方法が健に合理的な交通手段がないためのやむをえない代替方法といえるなど判示の事情のもとにおいては、使用者の支配管理下におかれているとみられ…
事件番号: 平成6(行ツ)200 / 裁判年月日: 平成9年4月25日 / 結論: 破棄自判
配電工が、業務に従事中に、クレーンのワイヤーが切れ、ワイヤー、フック、電柱等の重量物が地上約三メートルの高さから付近に落下し、顔面に軽度の負傷をするという事故に遭った日の二日後に、非外傷性の脳血管疾患を発症し、その翌日に死亡した場合において、右配電工は、右発症の基礎となり得る素因又は疾患を有していたことは否定し難いが、…
事件番号: 平成7(行ツ)53 / 裁判年月日: 平成11年10月12日 / 結論: 棄却
長年にわたりセメント原料等による粉じんの飛散している事業場等においてアーク溶接作業に従事しじん肺管理区分が管理三イと認められるじん肺及びこれに合併する肺結核にり患した労働者が原発性肺がんにより死亡した場合において、粉じん作業ないしじん肺と肺がんとの間の病理学的、疫学的因果関係の存否につき専門家の見解が分かれており、けい…