平成元年四月一日の消費税法の適用の際に消費税を転嫁するための運賃変更の認可申請をせず、その後も同業他社と同様の運賃変更の認可申請をしなかったため、同業他社の運賃との間に一四・二パーセントの格差が生じていた一般乗用旅客自動車運送事業者が、平成三年三月二九日、道路運送法九条一項に基づき、消費税転嫁分として三パーセントの値上げを内容とする運賃変更の認可申請をしたところ、地方運輸局長が、右事業者の提出した原価計算書その他の書類に基づき、右申請に係る運賃の変更が同条二項一号の基準に適合するか否かを昭和四八年七月二六日付け自旅第二七三号自動車局長依命通達別紙(2)の「一般乗用旅客自動車運送事業の運賃原価算定基準」に準拠して個別に審査しようとして、右事業者に対して右原価計算書に記載された原価計算の算定根拠等について説明を求めたにもかかわらず、右事業者が運賃変更の理由は消費税の転嫁である旨の陳述をしたのみで右算定根拠等を明らかにしなかったため、地方運輸局長において右事業者の提出した書類によっては右事業者の採用した原価計算の合理性について審査判断することができなかったなど判示の事実関係の下においては、地方運輸局長がした右申請を却下する旨の処分には、その裁量権を逸脱し、又はこれを濫用した違法はない。
一般乗用旅客自動車運送事業者の道路運送法九条一項に基づく運賃変更の認可申請を却下した地方運輸局長の処分にその裁量権を逸脱し又はこれを濫用した違法はないとされた事例
行政事件訴訟法30条,道路運送法9条1項,道路運送法9条2項1号
判旨
タクシー運賃変更認可の基準(道路運送法9条2項1号)の趣旨は、事業の安定とサービス低下防止にあり、同基準への適合性判断には行政庁の専門技術的裁量が認められる。したがって、原価計算の算定根拠を明らかにしない申請に対し、資料不足としてなされた却下決定は適法である。
問題の所在(論点)
運賃変更認可基準(道路運送法9条2項1号)の趣旨と、同基準の適合性判断における行政庁の裁量の有無、および算定根拠の提出がない場合の却下決定の適法性が問題となる。
規範
道路運送法9条2項1号の認可基準は、公共性や公益性に基づき安定した事業経営の確立とサービスの低下防止を目的とする。同基準の適合性は行政庁の専門技術的な知識経験と公益上の判断を必要とし、裁量的要素が含まれる。具体的には、合理性を有する「平均原価方式」等の算定基準に準拠した審査が許容され、申請額が適正な原価を償わない場合は、一定の利潤が得られるとしても同号の基準に適合しないと解すべきである。また、特段の事情により個別審査を行う場合でも、申請者が算定根拠を明示し、同基準に適合することを明らかにする必要がある。
事件番号: 平成12(受)192 / 裁判年月日: 平成13年3月13日 / 結論: その他
労働組合と使用者との間の労働条件その他に関する合意は,書面に作成され,かつ,両当事者がこれに署名し又は記名押印しない限り,労働協約としての規範的効力を生じない。
重要事実
タクシー業者である被上告人らは、他社が消費税転嫁や賃金改善のための大幅な運賃値上げ認可を受ける中、あえて3%のみの値上げを申請した。近畿運輸局長は、他社との格差が14.2%もある低額な申請の真意を測りかね、原価計算の算定根拠等を求めた。しかし、被上告人らは「理由は消費税転嫁である」と述べるのみで具体的な算定根拠を明示しなかった。そのため、局長は基準適合性を判断する資料が不足しているとして本件申請を却下した。
あてはめ
まず、運賃原価算定基準に基づく審査方法は合理性を有し、局長がこれに準拠して個別審査を試みたことは相当である。次に、被上告人らは本件申請に係る運賃額が同号の基準(能率的な経営の下での適正原価の補填)に適合することを明らかにする責務があるところ、局長の説明要求に対し、消費税転嫁という理由を述べるにとどまり、算定根拠を明らかにしなかった。このため、局長が提出書類から原価計算の合理性を審査判断できなかったことは止むを得ない。
結論
本件申請につき、法9条2項1号の基準適合性を判断するに足りる資料の提出がないとしてなされた本件却下決定は、裁量権を逸脱・濫用したものではなく適法である。
実務上の射程
行政裁量の中でも、専門技術的判断を要する認可基準の解釈・運用に関する射程を持つ。答案では、申請者側の資料提出責任や、行政側が依拠する審査基準(本件では算定通達)の合理性を肯定する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和42(オ)53 / 裁判年月日: 昭和42年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】印鑑証明事務を取り扱う公務員が、偽造印鑑による印影であることを見抜けず、かつ本人を詐称する者を真実の本人と信じたことに無理がない場合には、国家賠償法1条1項の過失は否定される。 第1 事案の概要:公務員Eは、D名義の印鑑証明書の発行事務において、Dを詐称するFから申請を受けた。その際、Eは提示され…
事件番号: 昭和42(オ)771 / 裁判年月日: 昭和43年11月5日 / 結論: 棄却
執行吏が有体動産に対する強制執行において、第三者所有のジュークボックスおよびこれに内蔵されていたレコードを債務者の所有と誤認し、かつ、ジュークボックス内に金銭が内蔵されていたことを看過した場合でも、右ジュークボックスおよびレコードを債務者が占有し、かつ、本件執行当時執行の行なわれた県内ではジュークボックスがほとんど普及…
事件番号: 平成9(オ)317 / 裁判年月日: 平成11年7月16日 / 結論: 破棄差戻
トラックに積載された鋼管くいをクレーン車の装置により工事現場に荷下ろしする際に玉掛け作業を手伝った右トラックの運転者甲が鋼管くいの落下により死亡した事故において、鋼管くいは工事現場で車上に積載したままの状態で工事業者に引き渡す約定とされており、甲は、右クレーン車の運転者乙が行う鋼管くいの荷下ろし作業について、指示や監視…