概算払による公金の支出についての住民監査請求は、右公金の支出がされた日から一年を経過したときはすることができない。
概算払による公金の支出と住民監査請求期間の起算日
地方自治法232条の5第2項,地方自治法242条2項,地方自治法242条の2第1項4号
判旨
概算払による公金の支出は、精算手続の完了を待たず、それ自体が住民監査請求の対象となる財務会計上の行為に当たる。したがって、当該監査請求の期間制限は、精算時ではなく概算払による支出がされた日から起算される。
問題の所在(論点)
概算払による公金の支出が住民監査請求の対象となる「公金の支出」に該当するか。また、その場合の監査請求期間(地方自治法242条2項)の起算点はいつか。
規範
地方自治法232条の5第2項に基づく概算払は、支出金額を確定する精算手続の完了を待たず、住民監査請求(同法242条1項)の対象となる財務会計上の行為(公金の支出)に当たる。そのため、概算払による支出についての監査請求期間は、原則として当該支出がなされた日から起算される(同条2項)。なお、後に債務が確定した段階での精算手続に別途違法不当な点がある場合は、それについて別途監査請求を行うことが可能である。
重要事実
上告人は、普通地方公共団体が行った公金の概算払について、違法または不当であるとして住民監査請求を行った。しかし、当該監査請求がなされたのは、概算払としての公金支出が行われた日から1年以上が経過した後であった。原審は、概算払自体が監査請求の対象となる財務会計上の行為であり、精算手続を待つ必要はないとして、期間制限(1年)の経過を理由に本件請求を不適法と判断した。これに対し、上告人が精算手続まで期間は進行しない旨を主張して上告した事案である。
あてはめ
概算払は、地方自治法が認める支出の一方法であり、確定的な債務の支払ではないものの、公金の現金の流出を伴う行為である。監査請求制度の趣旨は財務会計上の行為の適正化にあるから、支出金額の精算を待たずとも、概算払による支出自体に違法・不当があればその時点で監査請求を認めるべきである。本件においても、概算払がなされた時点で「財務会計上の行為」は完了しており、その時点から1年の期間制限が進行すると解される。精算手続は別途の行為として評価し得るにすぎず、概算払時点での不法性を争うための期間制限を延長させる理由にはならない。
結論
概算払による公金の支出についての監査請求は、当該支出がされた日から1年を経過したときは、原則としてこれをすることができない。
実務上の射程
住民訴訟における監査請求前置の充足(期間遵守)を検討する際の重要判例である。特に、旅費や委託費など概算払が先行し、後に精算が行われる事例において、概算払自体の違法を争うのであれば、精算時ではなく支出時を基準に期間を計算しなければならないという実務上の指針を示すものである。
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