民訴法四二〇条一項六号に該当する事由を再審事由とし、かつ、同条二項の適法要件を主張する再審の訴えは、その対象となった原判決の証拠とされた文書の偽造等に係る公訴権の時効消滅等が原判決の確定前に生じた場合であっても、右文書の偽造等につき有罪の確定判決を得ることを可能とする証拠が原判決の確定後に収集されたものであるときは、同条一項ただし書により排斥されることはない。
再審の訴えの対象となった原判決の証拠とされた文書の偽造等につき有罪の確定判決を得ることを可能とする証拠が原判決の確定後に収集された場合の再審の訴えの許否
民訴法420条1項ただし書,民訴法420条1項6号,民訴法420条2項
判旨
民訴法338条1項柱書但書により再審の訴えが制限されるのは、上訴により再審事由を主張したか、事由の存在を知りつつ主張しなかった場合に限られる。偽造等につき有罪確定判決を得られないことを要件とする再審(同条2項)において、その立証に必要な証拠を前訴判決確定後に収集した場合は、同項柱書但書に該当せず適法である。
問題の所在(論点)
文書偽造を理由とする再審請求(民訴法338条1項6号、2項)において、公訴時効完成等の事実が前訴確定前に発生していた場合、同条1項柱書但書の「上訴によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったとき」に該当し、再審が排斥されるか。
規範
1. 民訴法338条1項柱書但書により再審が許されないのは、再審原告が前訴の受訴裁判所に対し、上訴により当該再審事由を主張したか、又は事由の存在を知りつつあえて主張しなかった場合に限られる。 2. 同条2項の「証拠欠缺以外の理由により有罪の確定判決……を得ることができないとき」とは、偽造等につき本来なら有罪判決が可能であったが、被疑者の死亡や公訴時効消滅等の実体に関係のない事由により得られなくなったことをいう。この場合、再審申立人は、死亡等の事実のみならず、その事実がなければ有罪判決が可能であったことも立証しなければならない。 3. 再審事由の基礎となる事実が前訴確定前に生じていたとしても、有罪判決の立証を可能にする証拠が前訴判決確定後に収集されたものであれば、同項柱書但書には該当しない。
事件番号: 昭和39(オ)1374 / 裁判年月日: 昭和42年6月20日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第二項後段により再審請求するには、有罪の確定判決を得る可能性があるのに、被疑者が死亡したり、公訴権が時効消滅したり、あるいは起訴猶予処分をうけたりして有罪の確定判決をえられなかつたことを証明することを要する。
重要事実
再審被告(上告人)らが前訴で使用した株券は、亡Fが代表取締役の地位を失った後に作成日付を遡らせて作成した偽造文書であった。再審原告(被上告人)らは、前訴判決確定後に、新たな売上帳の発見およびDの証言を得ることで、初めて偽造の立証が可能となった。しかし、その時点で既に偽造行為から7年が経過しており、公訴時効が完成していたため、偽造罪の有罪確定判決を得ることができなかった。これを受け、再審原告は民訴法420条1項6号(現行338条1項6号)に基づき再審を申し立てた。
あてはめ
本件では、偽造を立証するための決定的な証拠(売上帳および証言)が得られたのは、前訴判決が昭和62年11月に確定した後であった。再審原告らは、これらの新証拠により初めて、当該株券が代表権のない者によって作成日付を遡って作成された偽造文書であることを具体的に主張・立証できるようになった。時効消滅という「有罪判決を得られない事由」自体は前訴確定前に存在していたが、それを支える証拠の収集が確定後である以上、前訴の上訴手続において当該再審事由を知りながら主張しなかったとはいえない。したがって、本件再審の訴えは338条2項の要件を具備し、かつ同条1項柱書但書による制限も受けない。
結論
再審事由の立証に必要な証拠を前訴判決確定後に収集したときは、民訴法338条1項柱書但書には該当せず、再審の訴えは適法である。
実務上の射程
再審事由の知得時期および主張可能性の判断基準を具体化した判例である。特に、338条2項が要求する「有罪判決に代わる立証」のための証拠収集時期を重視しており、答案上は、単に偽造の事実を知っていたか否かだけでなく、それを有効に主張・立証し得る客観的状況(証拠の有無)があったかを検討する際の根拠となる。
事件番号: 昭和44(オ)793 / 裁判年月日: 昭和45年10月9日 / 結論: 棄却
確定判決の証拠となつた証言について偽証罪の起訴猶予処分があつたため、民訴法四二〇条一項七号に基づいて再審の訴が提起された場合においては、再審裁判所は、右起訴猶予処分の当否を問うことなく、同条二項の要件を具備したものとしてさらに再審事由の有無について判断すべきであるが、再審事由の有無自体については右処分の判断に拘束されな…
事件番号: 昭和37(オ)181 / 裁判年月日: 昭和38年7月11日 / 結論: 棄却
民訴法第四二〇条第一項但書の「当事者」とは、当事者の訴訟代理人を含むものと解すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)702 / 裁判年月日: 昭和43年2月20日 / 結論: 棄却
背任罪の時効完成による不起訴処分が民訴法第四二〇条第二項の要件をみたすためには、さらに公訴権が時効により消滅しなかつたならば有罪の確定判決がえられたであろうと認めるに足りる事実が証明されなければならない。