同一の債権につき、甲の強制執行による差押えと乙の物上代位権の行使としての差押えとが競合した場合に、甲乙に対し二重に弁済をした第三債務者は、甲に対し不当利得として右弁済金の返還を請求することができる。
債権執行による差押えと物上代位権の行使としての差押えとが競合した場合において双方の差押債権者に対し二重に弁済をした第三債務者の不当利得返還請求権
民法481条,民法703条,民事執行法145条,民事執行法155条1項,民事執行法193条
判旨
差押・転付命令の送達時に目的債権が発生していない場合、転付命令は無効であり、さらに弁済前に優先権者による差押えがなされたときは、先行債権者への弁済は有効な弁済とならず、不当利得返還義務を負う。
問題の所在(論点)
将来債権(買戻代金債権)に対する転付命令の有効性と、無効な転付命令(または有効な差押命令)に基づく弁済後に優先債権者が現れた場合の不当利得返還請求の可否。
規範
1. 転付命令の送達時において、目的債権が未だ発生していない場合には、当該転付命令は無効である。 2. 転付命令が無効であっても差押命令が有効であれば債権者は取立権を有するが、第三債務者が現実に弁済をする前に、優先権を有する他の債権者(物上代位権者等)による差押命令が送達された場合には、第三債務者は優先権者に弁済すべき義務を負う。この場合、先行の差押債権者に対する直接の弁済は有効な弁済とは認められず、受領者は不当利得返還義務を負う。
重要事実
債権者Aは、債務者Bが不動産買戻特約に基づき有する買戻代金債権を差し押さえ、転付命令を得た。しかし、送達当時、Bは買戻権を行使しておらず債権は未発生だった。その後、Bが買戻権を行使し債権が確定したが、Aが支払を受ける前に、当該不動産の根抵当権者Cが物上代位に基づき同債権を差し押さえた。第三債務者Dは、Aに対し債権額を支払ったが、後にCから提起された取立訴訟で敗訴し、Cにも二重に弁済する羽目になったため、Aに対し支払金の返還を求めた。
事件番号: 昭和53(オ)809 / 裁判年月日: 昭和54年1月25日 / 結論: 棄却
抵当権の付着する土地についてされた譲渡担保契約が詐害行為に該当する場合において、譲渡担保権者が当該抵当権者以外の債権者であり、右土地の価額から右抵当権の被担保債権の額を控除した額が詐害行為取消権の基礎となつている債権の額を下回つているときは、譲渡担保契約の全部を取り消して土地自体の原状回復をすることを認めるべきである。
あてはめ
本件転付命令の送達時、買戻権は未行使で債権が発生していないため転付命令は無効である。Aは差押債権者としての取立権を有するにとどまるが、DがAに支払う前に、優先権を有する根抵当権者Cによる物上代位の差押えがなされていた。この場合、DはCに対して弁済すべきであり、Aに対する支払を有効な弁済と解する余地はない。したがって、Aの受領は法律上の原因がなく、Dは二重弁済を強いられた損害を回復するため、Aに対し不当利得返還を請求できる。
結論
転付命令は無効であり、優先権者による差押えが先行していた以上、Aへの支払は有効な弁済とならない。したがって、Dの不当利得返還請求は認められる。
実務上の射程
転付命令の効力発生時期の厳格性と、物上代位権等の優先権が介入した場合の取立権の限界を示す。実務上は、第三債務者が二重弁済のリスクを負わないよう、民事執行法156条に基づく供託を行うべき場面であることを示唆している。答案上は、債権譲渡や差押えの競合、不当利得の成否が問われる場面で活用できる。
事件番号: 平成14(受)912 / 裁判年月日: 平成16年2月20日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が,貸金の弁済を受ける前に,その弁済があった場合の貸金業の規制等に関する法律18条1項所定の事項が記載されている書面で貸金業者の銀行口座への振込用紙と一体となったものを債務者に交付し,債務者がこの書面を利用して同銀行口座に対する払込みの方法によって利息の支払をしたとしても,同法43条1項の適用要件である同法18…