抵当権の付着する土地についてされた譲渡担保契約が詐害行為に該当する場合において、譲渡担保権者が当該抵当権者以外の債権者であり、右土地の価額から右抵当権の被担保債権の額を控除した額が詐害行為取消権の基礎となつている債権の額を下回つているときは、譲渡担保契約の全部を取り消して土地自体の原状回復をすることを認めるべきである。
抵当権の付着する土地の譲渡担保契約の全部が詐害行為に該当するものとして土地自体の原状回復が許される場合
民法424条
判旨
抵当権設定済みの不動産が譲渡担保に供された場合、当該不動産の価額が被担保債権額を上回る限り、債権者は詐害行為として譲渡契約をすべて取り消し、不動産自体の返還を請求できる。
問題の所在(論点)
抵当権が設定されている不動産が譲渡担保に供された場合において、不動産の価額が被担保債権額を上回っているとき、債権者は詐害行為取消権(民法424条1項)に基づき、価格賠償ではなく不動産自体の返還を請求できるか。
規範
詐害行為取消権の制度趣旨は、詐害行為によって逸出した財産を取り戻して債務者の一般財産を原状に回復させることにある。したがって、逸出した財産自体の回復が可能である場合には、できる限り現物返還を認めるべきである。
重要事実
債務者Dは、被上告人に対し約485万円の求償債務を負っていたが、経営悪化に伴い、所有する本件土地(価額約1,500万円)を上告人に対し譲渡担保として譲渡した。本件土地には譲渡前に極度額1,600万円の根抵当権が設定されており、譲渡直後の被担保債権額は約1,390万円、事実審口頭弁論終結時では約1,200万円であった。被上告人は、右譲渡が詐害行為に当たるとして、譲渡担保契約の取消しと土地自体の返還を求めた。
事件番号: 昭和61(オ)495 / 裁判年月日: 昭和63年7月19日 / 結論: 破棄差戻
抵当権の設定されている不動産について当該抵当権者以外の者との間にされた代物弁済予約及び譲渡担保契約が詐害行為に該当する場合において、右不動産が不可分のものであり、詐害行為の後に弁済等によつて右抵当権設定登記が抹消されたときは、その取消による原状回復は、右不動産の価額から右抵当権の被担保債権額を控除した残額の限度で価格賠…
あてはめ
本件土地の価額は1,500万円を下回らないのに対し、先行する根抵当権の被担保債権額は譲渡時で1,390万円、口頭弁論終結時で1,200万円である。そうすると、不動産の価額が担保権の負担を上回っており、債務者の一般債権者のための責任財産としての価値が残存しているといえる。このように逸出した財産自体の回復が可能である場合には、制度趣旨に照らし、現物返還を認めるのが相当である。したがって、本件土地全部についての譲渡担保契約を取り消し、土地自体の返還を認めるべきである。
結論
譲渡担保契約の取消しに伴い、不動産自体の返還を請求することができる。
実務上の射程
抵当権付不動産の譲渡が詐害行為となる場合、不動産価額が被担保債権額を超えるときは現物返還を原則とする。ただし、後順位抵当権が消滅している場合など、現物返還が受益者に不当な利益を与える場合には価額賠償が検討されるが、本判決は「回復が可能であればできるだけ現物」という原則を強調しており、答案上は現物返還の可否をまず検討すべきである。
事件番号: 昭和36(オ)553 / 裁判年月日: 昭和39年7月10日 / 結論: 破棄差戻
詐害行為として不動産売却行為を取り消し所有権取得登記の抹消を受益者に請求する訴は、受益者が当該不動産上に第三者のために右不動産の価格を上廻る被担保債権額について抵当権を設定している場合には、特段の事情のないかぎり、許されない。