適法な転貸借関係が存在する場合、賃貸人が賃料の不払を理由として賃貸借契約を解除するには、特段の事情のない限り、転借人に通知等をして賃料の代払の機会を与えなければならないものではない。 (反対意見がある。)
賃料の不払を理由とする賃貸借契約の解除と転借人に賃料の代払の機会を与えることの要否
民法541条,民法613条
判旨
適法な転貸借関係がある場合でも、賃貸人が賃料不払を理由に賃貸借契約を解除するには、特段の事情のない限り、転借人に対して賃料代払の機会を与えるための通知等を行う必要はない。
問題の所在(論点)
適法な転借人が存在する場合、賃貸人が賃料不払を理由に賃貸借契約を解除(民法541条)するにあたって、信義則上、転借人に対して代払の機会を与えるための事前通知を行う義務があるか。
規範
土地の賃貸借契約において、適法な転貸借関係が存在する場合であっても、賃貸人が賃料不払を理由に契約を解除するにあたり、転借人に対して賃料不払の事実を通知し、代払の機会を与えなければならないものではない。ただし、通知等をすべき「特段の事情」がある場合はこの限りではない。
重要事実
賃貸人D(被上告人らの先代)は、賃借人Eとの間で土地賃貸借契約を締結し、Eは賃貸人Dの承諾を得て、上告人(転借人)に対し当該土地を適法に転貸した。その後、賃借人Eが賃料の支払を怠ったため、賃貸人DはEに対し、上告人(転借人)への通知等を行うことなく賃料不払を理由に賃貸借契約の解除を通知した。被上告人らは、転借人である上告人に対し、建物収去土地明渡しを求めて提訴した。
事件番号: 昭和48(オ)68 / 裁判年月日: 昭和48年10月12日 / 結論: 棄却
土地が適法に転貸され、転借人になんら非違もないのに、賃借人会社の代表者である賃貸入が、右転借権を消滅させるため、右会社の自己破産を申し立てて破産宣告をえ、これを理由に賃貸借契約を解除するようなことは、転借人に対し著しく信義則に反し、右解除により賃貸借契約が終了しても、転借権は消滅しない。
あてはめ
転借権は賃借権の存在を前提とする付随的権利であり、賃借人の債務不履行により賃借権が消滅すれば、転借権も原則として消滅する。本件において、賃借人Eの賃料不払という債務不履行の事実は確定しており、賃貸人Dは民法541条に基づく解除権を有している。上告人(転借人)に対してあらかじめ賃料不払の事実を通知し、代払の機会を与えるべき「特段の事情」の存否を検討するに、本件の事実関係の下ではそのような特段の事情は認められない。したがって、転借人への通知がないことをもって解除の効力が否定されることはない。
結論
本件賃貸借契約の解除は有効であり、転借人は賃貸人に対し、転借権をもって対抗できない。被上告人らの建物収去土地明渡請求は認容される。
実務上の射程
適法な転貸借であっても、債務不履行解除については催告・通知なく転借人に対抗できるとするのが判例の原則である(合意解約とは異なる)。答案上は、転借人の地位が賃借権に依存するものであることを理由として本規範を提示しつつ、「特段の事情」の有無で個別事案の具体妥当性を図る枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和59(オ)1178 / 裁判年月日: 昭和62年3月24日 / 結論: その他
土地の無断転貸が行われたにもかかわらず賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が賃貸借を解除することができない場合において、当該賃貸借が合意解除されたとしても、それが賃料不払等による法定解除権の行使が許されるときにされたものである等の事情のない限り、賃貸人は右合意解除の効果を転借人に対抗するこ…
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…
事件番号: 昭和41(オ)429 / 裁判年月日: 昭和44年2月18日 / 結論: 棄却
賃貸人の承諾を得ないで賃借権の譲渡または転貸が行なわれた場合であつても、それが賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、譲受人または転借人は、譲受または転借をもつて、賃貸人に対抗することができ、右の特段の事情については、譲受人または転借人において主張・立証責任を負う。