土地が適法に転貸され、転借人になんら非違もないのに、賃借人会社の代表者である賃貸入が、右転借権を消滅させるため、右会社の自己破産を申し立てて破産宣告をえ、これを理由に賃貸借契約を解除するようなことは、転借人に対し著しく信義則に反し、右解除により賃貸借契約が終了しても、転借権は消滅しない。
土地の賃貸借契約が賃借人の破産により解除されても信義則上転借権が消滅しないとされた事例
民法1条2項,民法612条,民法621条
判旨
賃貸人が転借人の転借権を消滅させる目的で、自ら主宰する賃借人会社の自己破産を申し立てて賃貸借を解除することは、信義則に反し、転借人に対してはその解除の効力を主張できない。
問題の所在(論点)
賃借人の破産を理由とする賃貸借契約の解除が、転借人の転借権を消滅させる目的で意図的に作為されたものである場合、信義則に基づきその解除の効力が制限されるか。また、その法理は転貸借と再転貸借の関係にも及ぶか。
規範
賃貸借契約が賃借人の破産を理由とする解除により終了した場合、原則として転貸借契約も終了する。しかし、転借人に非違行為がないにもかかわらず、賃貸人が自己の都合により転借権を消滅させる目的で、賃借人たる会社を代表して自己破産を申し立て、これを理由に解除権を行使することは、転借人に対する著しい信義則(民法1条2項)違反となる。この場合、当該解除による賃貸借の終了は、転借人との関係では効力を生じず、転借権は消滅しない。
重要事実
土地所有者から賃借した上告人は、自ら主宰する同族会社Dに転貸し、Dはさらに被上告人B1へ再転貸(本件では転貸借と再転貸借の関係)して給油所を設置させた。その後、Dの経営悪化に伴い、上告人はB1に落ち度がないにもかかわらず、B1の転借権を消滅させて跡地を転用するため、Dの代表者として意図的に自己破産を申し立てて破産宣告を得た。上告人は、Dの破産を理由にDとの賃貸借を解除し、B1に対し転借権の消滅を主張して土地の明け渡しを求めた。
あてはめ
本件において、上告人はD石油の代表者として、転借人B1に何ら非違がないにもかかわらず、単に転借権を消滅させ土地を他へ利用するという自己の画策のために意図的に破産申立てを行っている。このような解除権の創出および行使は、形式上は破産解除の要件を満たすものの、実質的には転借人の地位を不当に害するものであり、著しく信義に反すると評価される。したがって、この解除によってB1の転借権が消滅したと主張することは許されない。この法理は再転貸借の関係においても同様に妥当する。
結論
上告人の請求は棄却される。賃貸借契約の解除は被上告人B1との関係で効力を生じず、B1の転借権は消滅しない。
実務上の射程
賃貸借の合意解除によって転借権を対抗できないとする法理(民法613条3項参照)を、形式的には破産という法定解除事由がある場合にも、実質的に賃貸人の意図的な作為がある場合に拡張して適用した射程を持つ。答案上は、解除事由が形式的に存在する場合であっても、賃貸人と賃借人が通謀している場合や、賃貸人が賃借人を実質的に支配して解除事由を作為した場合には、信義則(1条2項)による修正として本判例を引用すべきである。
事件番号: 昭和25(オ)140 / 裁判年月日: 昭和28年9月25日 / 結論: 棄却
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項により契約を解除することはできない。(少数意見および補足意見がある。)
事件番号: 昭和48(オ)711 / 裁判年月日: 昭和48年11月22日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきであり、この理は、第三者が賃借人の賃料滞納の事実を知らず、かつ、知らないことについて過失がなかつた場…
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…