第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきであり、この理は、第三者が賃借人の賃料滞納の事実を知らず、かつ、知らないことについて過失がなかつた場合においても同様である。
建物買取請求権が消滅するものと認められた事例
借地法10条
判旨
賃借権の譲渡について賃貸人の承諾が得られないまま、賃料不払を理由に賃貸借契約が解除された場合、建物の譲受人は建物買取請求権を行使できない。この結論は、譲受人が賃料滞納の事実を過失なく知らなかった場合であっても左右されない。
問題の所在(論点)
賃借権の譲渡について賃貸人の承諾がない段階で、賃料不払を理由に賃貸借が解除された場合、建物譲受人は建物買取請求権を行使できるか。また、譲受人が賃料滞納につき善意無過失であることは、その結論に影響を与えるか。
規範
賃借権の譲渡につき賃貸人の承諾がない間に、賃料不払を理由として賃貸借契約が解除された場合には、建物譲受人の建物買取請求権(旧借地法10条、現借地借家法14条参照)は消滅する。その際、譲受人が賃料滞納の事実について善意無過失であったとしても、買取請求権の行使は認められない。
重要事実
第三者(譲受人)が賃借土地上の建物の所有権を取得したが、賃貸人は賃借権の譲渡を承諾していなかった。その承諾が得られない間に、賃借人(譲渡人)による賃料の不払を理由として賃貸借契約が解除された。譲受人は、自身が賃料滞納の事実を知らず、かつ知らないことに過失がなかったと主張して、旧借地法10条に基づく建物買取請求権を主張した。
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。
あてはめ
最高裁昭和33年4月8日判決の法理によれば、賃料不払による解除がなされた場合、譲受人の建物買取請求権は消滅する。本件において、賃貸人は譲渡を承諾しておらず、かつ有効に賃料不払解除が成立している。譲受人が賃料滞納について善意無過失であったとしても、賃借人の債務不履行という客観的事実に基づき賃貸借関係が終了した以上、投下資本回収の保護を受ける前提を欠くため、特段の考慮はなされない。
結論
建物譲受人は建物買取請求権を行使できない。上告人の請求を排斥した原審の判断は妥当である。
実務上の射程
借地借家法14条の建物買取請求権の成否が問題となる場面で、賃貸借の終了原因が債務不履行である場合の抗弁として機能する。譲受人の主観(善意無過失)を問わず一律に否定する極めて強力な規範であり、解除の帰責事由が譲渡人にある場合でも譲受人は権利を失う点に注意が必要である。
事件番号: 昭和46(オ)528 / 裁判年月日: 昭和48年9月7日 / 結論: 棄却
建物とともにその敷地の賃借権を譲り受けた者の有する借地法一〇条の建物買取請求権は、賃貸人が賃借人である譲渡人との間で賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情がないかぎり、消滅しないものと解すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)260 / 裁判年月日: 昭和33年4月8日 / 結論: 棄却
第三者が、賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基く第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
事件番号: 昭和40(オ)386 / 裁判年月日: 昭和40年10月22日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地上の建物を取得した場合でも、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しないうちに土地賃貸借契約が賃料不払により解除されたときは、右第三者は、建物買取請求権を有しない。
事件番号: 昭和42(オ)430 / 裁判年月日: 昭和42年8月24日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地上の建物を取得した場合でも、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しないうちに土地賃貸借契約が賃料不払により解除されたときは、第三者は建物買取請求権を有しない。