甲所有の自動車をその子乙の友人丙が借り受けて運転中、同乗していた乙が丙の運転上の過失により死亡した場合、乙が、右の借受けについて口添えをしたにすぎず、丙より三年年少であって丙に対して従属的な立場にあり、当時一七歳で普通免許取得資格がなく、右自動車を運転したこともなかったなど判示の事実関係の下においては、乙は、自動車損害賠償保障法三条にいう「他人」に当たる。
友人が借り受けて運転していた父所有の自動車に同乗中死亡した子が自動車損害賠償保障法三条にいう「他人」に当たるとされた事例
自動車損害賠償保障法3条
判旨
自動車の借受けに口添えをした同乗者が、運転者より年少で免許も有しておらず、運行を支配・管理できる地位にない場合には、自賠法3条の「他人」に該当する。
問題の所在(論点)
被害者である同乗者が、車両の借受けに関与(口添え)していた場合に、自賠法3条の「他人」に該当するか(被害者の運行供用者性が否定されるか)。
規範
自賠法3条にいう「他人」とは、自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)および当該自動車の運転者以外の者をいう。同乗者が「他人」に該当するか否かは、当該車両の運行を支配・管理することができる地位にあるか、すなわち実質的な運行支配の有無によって判断すべきである。
重要事実
D(21歳)と亡E(17歳)は職場の友人であり、DはEより年長であった。Dは、Eが自身の父Fに対し口添えをしたことで、Fから本件自動車を借り受けた。Dの運転中、助手席のEはDの居眠り運転による事故で死亡した。Eは当時普通免許の取得資格がなく、運転経験もなかった。
あてはめ
まず、EはDが自動車を借りる際に口添えをしたに過ぎず、共同借受人とは認められない。次に、EはDより年少で従属的な立場にあり、かつ免許未取得で運転経験もない。これらの事実に照らせば、Eは本件自動車の運行を支配・管理することができる地位になかったといえる。したがって、Eに運行支配は認められない。
結論
Eは運行供用者には当たらず、自賠法3条にいう「他人」に該当する。よって、車両の保有者はEの死亡について賠償責任を負う。
実務上の射程
同乗者が運行支配を有するか否かの判断において、車両の借受けへの関与度合いだけでなく、年齢関係、免許の有無、運転経験といった「事実上の支配力」を総合考慮する実務上の指針となる。
事件番号: 昭和54(オ)174 / 裁判年月日: 昭和57年4月27日 / 結論: 破棄差戻
甲と乙が各自の車両を操作して、乙の車両荷台に甲運転の車両を積み込む際に、甲運転の車両が転倒し甲が死亡した事故につき、右車両積込みの提案及び具体的な車両の操作についての指示は、職場の先任者、年長者、経験者である甲によつてされ、乙は右指示に従つて自己の車両のブレーキを引き、荷台を傾斜させて右荷台に甲運転の車両が乗り入れてく…