地方公共団体が、使用目的を定めないで農地を買い受ける契約をした後、右農地を農地法五条一項四号、農地法施行規則七条六号所定の用途に供することを確定したときは、右売買契約は、その時点におい農地法所定の許可を経ないで効力を生ずる。
地方公共団体が使用目的を定めないで農地を買い受ける契約をした後に右農地を農地法施行規則七条六号所定の用途に供することを確定したときと売買契約の効力
農地法5条1項4号,農地法施行規則7条6号
判旨
地方公共団体が農地を買い受けた後、農地法上の許可が不要な用途(学校敷地等)に供することを確定したときは、その時点で売買は当然に効力を生じ、その後に許可申請協力請求権の消滅時効を援用することはできない。
問題の所在(論点)
農地法上の許可を要する売買において、許可申請協力請求権の消滅時効期間が経過した後に、地方公共団体が許可不要な用途への供用を確定させた場合、売買の効力が発生するか。また、その後の時効援用は認められるか。
規範
1. 地方公共団体が農地を買い受けた後、農地法施行規則7条6号所定の用途(学校敷地等)に供することを確定したときは、その時点において、都道府県知事の許可を経ずに売買の効力が生じる。 2. 農地の買主が有する許可申請協力請求権の消滅時効は、時効期間経過後に売主が援用して初めて確定的に生じる。したがって、時効期間経過後であっても、時効の援用前に当該用途が確定した場合には、買主に所有権が移転し、その後の時効援用は効力を生じない。
重要事実
地方公共団体である上告人は、昭和32年にDから農地を買い受け、代金を完済したが、具体的な使用目的は定めていなかった。昭和37年に所有権移転仮登記を経由したが、Dの相続人である被上告人が相続登記を完了した。上告人は、売買から約30年後の昭和62年5月に本件土地を中学校敷地として使用することを確定した。被上告人は、上告人の許可申請協力請求権が消滅時効にかかっていると主張し、仮登記の抹消等を求めた。
事件番号: 平成13(受)94 / 裁判年月日: 平成13年10月26日 / 結論: 破棄自判
農地を農地以外のものにするために買い受けた者は,農地法5条所定の許可を得るための手続が執られなかったとしても,特段の事情のない限り,代金を支払い農地の引渡しを受けた時に,所有の意思をもって農地の占有を始めたものと解するのが相当である。
あてはめ
本件において、上告人が本件土地を中学校敷地として使用することを確定したのは昭和62年5月である。これは農地法5条1項4号、同規則7条6号により知事の許可を要しない場合に該当する。この確定が、被上告人による消滅時効の援用より前になされたのであれば、確定の時点で当然に売買は効力を生じ、上告人は所有権を取得する。既に所有権が移転した以上、その後に被上告人が時効を援用しても、もはや協力請求権の消滅を主張する余地はないと解される。
結論
地方公共団体による用途確定が時効援用より先であれば、売買は有効となり所有権は移転する。原審は両者の先後関係を審理せずに時効消滅を認めたため、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
農地売買における許可申請協力請求権の消滅時効と、条件成就(または許可不要事由の発生)による所有権移転の前後関係を整理した判例である。特に「時効は援用によって初めて確定的な効果を生じる」という法理に基づき、援用前に権利が実現(本件では許可不要化による売買の有効化)した場合には、時効による阻止は認められないというロジックは、他の消滅時効の事案でも応用可能である。
事件番号: 昭和49(オ)398 / 裁判年月日: 昭和50年9月25日 / 結論: 棄却
時効による農地所有権の取得については、農地法三条の適用はない。
事件番号: 昭和63(オ)357 / 裁判年月日: 平成2年6月5日 / 結論: 破棄自判
売買予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記の経由された不動産につき抵当権の設定を受け、その登記を経由した者は、予約完結権の消滅時効を援用することができる。
事件番号: 昭和59(オ)211 / 裁判年月日: 昭和61年3月17日 / 結論: 破棄差戻
農地の売買に基づく県知事に対する所有権移転許可申請協力請求権の消滅時効期間が経過してもその後に右農地が非農地化した場合には、買主に所有権が移転し、非農地化後にされた時効の援用は効力を生じない。
事件番号: 昭和53(オ)1119 / 裁判年月日: 昭和59年9月20日 / 結論: 棄却
不動産の売買に基づく所有権移転登記手続請求権を被保全権利として処分禁止の仮処分を得た仮処分債権者は、売買が無効であつても、右売買によつて当該不動産の占有を開始し仮処分後にこれを時効により取得したときは、時効の完成したのちに右不動産を仮処分債務者から取得した第三者に対し、右仮処分が取得時効に基づく所有権移転登記手続請求権…